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にぎりこぷしのエコの細道 松下の省エネ技術 第六回目 スターリングエンジン なぜだのページ いままでは捨てていた熱から電気を生み出してしまうというスターリングエンジンを使った船舶用の排熱回収システム。その技術に迫ってみよう!

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2008年1月29日 公開

なぜだ!? 船にスターリングエンジンをのせるのは!

NMRI((独)海上技術安全研究所)、株式会社eスター、東海運(株)の3者は、JRTT((独)鉄道建設・運輸整備支援機構)の委託を受け、船舶のディーゼルエンジンの排熱を利用してスターリングエンジンで発電するシステムの研究を進めている。

船って電気使うんだっけ? イラスト

それにしても、そもそもなぜ船にスターリングエンジンを利用した発電システムをのせる必要があるのだろうか。

停まっていても動いてるんです……

貨物船などの大型の船舶は、港に停泊している際にも、貨物の積み降ろしや、中で生活する船員のために、エンジンをかけっぱなしにして電力を確保していることが多いそうだ。そのため、港湾地域ではこの排ガスによる大気汚染が深刻な問題となっている。船のエンジンはたいてい重油を燃料とするディーゼルエンジンで、排ガスには有毒なSOx(硫黄酸化物)が含まれる。もし停泊中に必要な電力をスターリングエンジンでまかなうことができれば、燃料が節約でき、大気汚染の軽減にもつながるのだ。

船舶の排ガスイメージ図

いったいどんだけ必要なの?

それじゃあ、いったいどのくらいの電気をスターリングエンジンで生み出せたら、停泊中の船のディーゼルエンジンを止めることができるのか。

もちろん、船によって事情はさまざまだろうが、ひとまずこのプロジェクトでは、10kWの電力が必要であると仮定。船の接岸が10時間と仮定して、必要な電力の総量は100kWh。それを2日間の航行で蓄電すると仮定すると(仮定ばっかり……)、2kWの発電能力が必要となる。それを4台のスターリングエンジンで発電するとして……という計算のもと、500W発電できるスターリングエンジンというのが開発目標となっている。

計算式 イラスト

ホントはお熱いのがお好き

熱を利用して発電するスターリングエンジンは、熱源の温度によって発電能力が大きく左右される。温度が高いほど、発生する電力も大きくなるわけで、一般的に十分な発電能力を発揮するためには、1,000℃以上の熱が必要だとされている。高い温度を確保するためにガスを燃焼させるなど、結局は燃料を使うことも多いという。

一方、今回利用しようとしている船のディーゼルエンジンの排ガスの温度は約400℃。いくら捨てるだけのいらない熱を利用できるといっても、いささか温度が低すぎる。400℃という低い温度で、スターリングエンジンがちゃんと発電できるのか、それが今回のプロジェクトの最大の課題だった。

どうしますか? 銅ですか!

そこで登場するのが、銅。銅は非常に熱伝導にすぐれた素材なので、この銅をヒータ部分に使用することで、低い温度でもその熱を効率的に回収することができるのだ。

銅製ヒータの写真

これがその銅製ヒータ。64本もの銅のパイプが束ねられている。そのまわりには、より効率的に熱を集めるために、これまた銅でできたフィン(羽)が取り付けられている。このヒータ部分を、ディーゼルエンジンから伸びる排気管に差し込んで、熱を回収する。

じゃあ、なんでいままでのスターリングエンジンは、そんな熱伝導にすぐれた銅のヒータを使ってなかったのだろうか。実は銅は熱に弱く、1,000℃以上の高い温度では溶けてしまう。熱には弱いが、熱伝導はいいという性質をもつ銅は、低い温度の排熱を回収するという、この発電システムだからこそ使えた素材なのである。


この銅がすごいのは、ヒータだけでなく、クーラ部分でもその力を発揮してしまうところ。銅のすぐれた熱伝導性が冷却効果を高めることにも一役買っている。

スターリングエンジン3兄弟

スターリングエンジン 構造図

このプロジェクトで製作されたスターリングエンジンは、いまのところ3台。それを並べて設置し、性能実験が行われている。いずれも基本の構造は同じだが、開発が進むにしたがって改善が加えられているため、3台並べてみると、それぞれにちがいがある。

3台のスターリングエンジン 写真

右側にあるのが1号機。それに改造を加えて作られたのが、左側の2号機。そして、さらなる改造の末、できあがったのが真ん中の3号機。3号機だけ、形がちょっとちがうのがおわかりだろうか。

スターリングエンジンの開発で難しい点は、ピストンの運動に高い精度が求められるところ。1号機、2号機は、アルミ削り出しで贅沢につくられた部品を使って、精度を高めている。

それにひきかえ、3号機はできるだけ既存のパイプなどを利用してつくられた、いわば安物。これはつまり、このスターリングエンジンの開発が、実用に向けて、性能を維持した上でどれだけコストを抑えられるかという段階に入っているということだ。3号機の想定されている寿命は6,000時間だという。

ついに出た! 500W!!

発電機 写真

生み出す電気を増やすためには、スターリングエンジン本体のみならず、付属する部品や装置も重要になってくる。とくに、フライホイールの回転を電気に変える発電機は重要なアイテム。

eスターは独立した企業とはいえ、松下グループ一員。この排熱回収システムには松下の技術も存分に組み込まれているという。こうして、改良につぐ改良を重ね、ついに実験室レベルで、開発目標であった1台あたり500Wという発電能力を実現できたのである。

スターリングエンジンのエネルギーバランス イラスト

スターリングエンジンの船出

陸上での最終調整の後、これらのスターリングエンジンを実際に船にのせての実証実験が行われるという。文字どおり、排熱回収スターリングエンジンの船出である。この実験でいい結果が得られれば、いよいよ実用化も見えてくる。


スターリングエンジンをのせた船が、日本に、そして世界に、どのようにエコの夜明けを告げるのか、注目したい!

「捨てる熱で発電!エコの夜明けだー!」

    「スターリングエンジン」は、誰が作ったの?
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「株式会社 eスター」のサイトはこちら。
http://www.estir.jp/


にぎりこぷし

1975年生まれ、北海道出身。
大学卒業後、5年間の出版社勤務を経て、フリーのイラストレーターに。
風刺をきかせたイラストを中心に、雑誌、テレビ、インターネットなどさまざまな分野で活動中。
大阪在住。

著書『日々にぎりこぷし』(バジリコ)

にぎりこぷしホームページはこちら(別ウィンドウで開きます)
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