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進化し続ける電気の道具 〜電池応用商品〜

文 カワイイファクトリー(別ウインドウが開きます)

2 看護師さんと共同開発「LED常備灯」

常備灯、と聞いて思い出すのは、壁に掛かったT字形ホルダーにはまっている、柄の部分が赤いライト。ホルダーから外すと自動的に点灯する、あれである。旅館やホテルでよく見かけるが、我が家にもひとつあって、ブレーカーが落ちたときなどに重宝している。
最近のものはもう少しスマートで、色もオフホワイトのものが主流になっているようだ。

とはいえ、今回の製品「LED常備灯」を見せられたときは、正直驚いた。これまでのイメージを覆す造形だったからだ。
「今までと全く違いますね。まるでコスメティック商品みたい!」
感動のあまり、筆者は思わず声を上げてしまった。大きさも、ちょうど手に収まるくらいでコンパクト。筒型のシンプルなかたちは、とてもおしゃれだ。

どうして、こんな製品が生まれたのか?

「実はこのデザイン、病院で働く女性の看護師さんたちのリクエストがきっかけになって生まれたんです」

開発に携わった松下電池工業の小林英典さんが教えてくれた。

赤い昔ながらの常備灯

筆者の家にある旧式常備灯。
レトロです。

LED常備灯

こちらがLED常備灯。
21世紀的デザインです。

小林秀典さん

応用機器ビジネスユニット ライト商品グループ ライト企画開発チーム主任技師の小林秀典さん

「え! それはどういうことなんですか?」と、筆者。

小林さんは説明する。

「病院では夜の巡回時に、患者さんの胸あたりを照らして、患者さんが息をしているかどうかを確かめます。ほんの数秒のことなんですが、従来のライトでは光の輪が広く、患者さんの顔にも光が当たってしまい、人によっては目を覚ましてしまう。これをなんとかしたい。胸の部分だけに光が当たるようにできないか、というのが看護婦さんからのリクエストだったのです」

いったい、その仕組みは今までの電球タイプとどう違うのだろう。

「LEDライトを使っていること、さらに非球面レンズを使っていることが大きな違いです」と、小林さん。

LEDとは、「Light Emitting Diode(発光ダイオード)」の略称で、電気が通ると発光する半導体のこと。1996年に自然の太陽に近い白色の光を出すLEDが開発され、その後、輝度(光の強さ)が急速に上がったことから、ライトへの応用が年々広がっている。

このLEDにはいろいろな特長ある。
電球はフィラメントを発熱させ光エネルギーに変えるため、エネルギーロスが出る。これに対し、LEDは直接発光するためエネルギーロスが少ない。その結果、

1. 豆電球に比べて発熱量が少ない。2. 電池の持ちがよく、電球タイプの2〜5倍も長く光っていられる。3. 球切れの心配も不要。つまり、LEDライトはメンテナンスフリー。

まさに、次世代型ライトなのだ。

しかし、白色LEDができたばかりのころは、明るさも光の強さも足りず、キーライトぐらいにしか応用できなかった。そこで、小林さんたちは、LEDライトに非球面レンズを組み合わせることで、均一でクリアかつ明るいスポット光を生み出したのだ。

「当時はLED自体の明るさが弱かったんです。そこで、なんらかの方法で光を集めて使わなあかんと。豆電球では反射鏡を使っていましたが、LEDではレンズを使ってみたんです。さらに、球面ではなく、非球面レンズにしてみると、光が横に漏れないというレンズ効果に加え、非球面の効果として均一なきれいで見やすい像をつくることができた。これで問題がすべて解決しました」

小林さんは言う。
「常備灯は本来、ホテルや旅館に置いていただくものです。そのため、持ち出されないようにあえてスイッチも付けていない。スタンドから出すと点灯しっぱなしになるんです。しかし、家庭用の常備灯では盗まれるような心配もないし、逆にスイッチを付けたほうが使いやすいということで、スイッチ付きにしました」

なるほど、スタンドはあくまでも常備灯入れなのだ。
それにしても、見れば見るほど、可愛らしくてナイスなデザイン。手の中にコンパクトに収まるのがいいかんじ。スタンドに立てておいても、赤い常備灯のようにヘンに目立ちすぎない。

そんなことを思っているうちに、このかたちをいったい誰がデザインしたのか、気になってきた。

病室でライトの検証

大阪にある大阪船員保険病院の看護師さんの協力を得て、病室でライトの検証を実施した。

ベッドの照射部分のイラスト

布団の上から胸部をライトで照らす

就寝中の患者の布団の上から胸部をライトで照らし、布団の微妙な動きを見極める。

スタンダードLED

スタンダードLED

キーライト

1999年に発売された白色LEDを組み込んだキーライト。

非球面レンズ

松下が独自に開発した非球面レンズ。光にムラができるといった球面レンズの欠点を解消している。

LED常備灯のデザインを担当したのは、パナソニックデザイン社の木原岳彦さんだとわかり、さっそく開発当時を振り返ってもらった。

「開発では、大きく以下の2点を考慮する必要がありました。ひとつは、一般家庭で使用される常備灯ということ。ふたつ目は、看護師が夜間の入院患者巡回に使用するライトということです」

木原さんは続けた。

「家庭用の常備灯としての役割は、地震や停電などの非常事態が生じたときに、瞬時に使えるということです。いざというときにすぐに手に取れる場所に常に置かれていなければなりません。

そうなるとインテリア性やサイズはとても重要です。そこで、玄関やリビング、キッチンなどにあっても、違和感がなく、上品に見えるデザインを目指しました。

一方、病院での使用については、やはり看護師さんの大半が女性であることを意識しました。女性が携帯するライトのイメージを追求した結果、家庭用常備灯で求められた上品さとの接点を見出すことができたのです。

コスメティック用品は女性が常に持ち歩くものですよね。そうしたものに必要なのは美しいジュエリーのような造形です。しかし同時に、このライトには業務で使用するプロ仕様としての本物感や高質感を備えている必要性があった。そうしたふたつの要件を総合していった結果、手の中にすっぽりと収まるシンプルな筒型となり、メタリックボディにシルバーラインが走ることで、単に美しいだけでなく品格のあるデザインが完成したのです」

そして、と木原さんは続けた。
「ライトというと男性用にデザインされたものがほとんです。今回のように女性のためにデザインされたものというのは、たぶんこれが初めてではないでしょうか」

確かに、直径が35mm、長さが111mmと小さく、100gと軽量。化粧品ポーチのなかにほかのコスメ類と一緒に入っていてもちっとも違和感がない。

「握りやすく、持ち歩きやすいサイズはどのくらいか。電池の選定から、電池交換の頻度や、入手しやすい電池までいろいろと検討し、単4電池4本が最適とわかり、本体サイズを決めていきました」

さらに、今回の製品は、レンズによるスポット光という全く新しい機能も備えていた。これを造形で表現するために、とくにレンズ周辺(発光部)のディテールにこだわり、スケッチを重ねたという。

木原さんは最後にこう締めくくった。
「結果的にはターゲットユーザーである看護師さんの生の声が後押しになり、デザインモックアップの仕様そのままに商品化された数少ない例のひとつになりました」

木原岳彦さん

現在はマレーシアに出向しているパナソニックデザイン社 HAデザイン分野 HA商品開発グループ 主任意匠技師の木原岳彦さん

LED常備灯

常備灯といえば、ほとんどがビスで壁面に設置する仕様だが、マンションなどの賃貸住宅での使用も考慮し、置型でも使えるホルダー形状となっている。

ライト部分とレンズ部分を離した写真

豆球タイプは開口部が広く、ライトから先端までがすり鉢上であるのに比べ、LEDライトは開口部が小さく、レンズの口径とほぼ同じ大きさ。

LED常備灯の開発に関わった、看護師のひとり、長田さんにもお話を伺ってみた。

「私たちが夜間の巡視業務のなかで実際に確認するのは、ベッドから落ちそうになっていないか、胸が動いて呼吸しているかどうかがメインです。だから、胸だけがくっきり見えればいいのですが、普通の懐中電灯ですと顔まで光がかかってしまうんです。ですから、光の範囲と、境界線がはっきりしているものをお願いしました」

このLED常備灯を試してみて、どうでしたか?

「これだと、暗いなかで照らした際、たとえ寝ている患者さんの鼻まで光があたってもまぶしくないんです。また、このライトの光の色ですと、動きが細かくわかるんです。黄色いライトと比べたのですが、白いライトのほうが、ちょっとした動きでもすごくわかりやすくて、この色にしてもらいました」

長田さんとのやりとりを取りもった、ライト商品グループのグループマネージャーの大田益男さんは当時をこう振り返る。

「今回は、携帯用ライトの発光体を豆球からLEDに変える転換期だったこともあり、人に優しいライトをつくりたいという思いがありました。明るいライトはつくりやすいんですが、それを、より見やすく、より人に優しいライトにするにはどうしたらいいのかを探っていったんです」

こうして、常備灯の開発から生まれたLEDと非球面レンズの組み合わせによるスポット光は、松下電池工業におけるLEDライトの基本型となる。

長田まどかさん

このプロジェクトに協力した看護師の長田まどかさん

黄色のLEDと白色LEDの見え方

黄色のLEDと白色LEDの見え方を実際に病室で検証した。

大田益男さん

応用機器ビジネスユニット ライト商品グループ グループマネージャーの大田益男さん

「LED常備灯の開発は、結果的にさまざまなLEDライト商品群を生み出すきっかけになりました」

こう語るのは、パナソニックデザイン社の福田收さん。彼は自転車用や登山用などに開発されたLEDライト商品群のデザインを担当してきたデザイナーだ。

「いもづる式ですね」と、すかさず尋ねた筆者に、福田さんはうなずいた。私たちはここでもまた、いもづる式という松下電池工業の得意技を目の当たりにしたのだった。

福田さんは続けた。
「これら一連のアウトドア系のLEDライト商品群は、外観面でもトータルイメージを大切にし、すべてシルバーメタリックボディを基調にデザインしています」

いもづる式に開発されたLEDライト商品群はイラストのとおりだ。
この分野の開発はまだ始まったばかり。今後ますます多彩な製品が誕生しそうだ。それにしても、松下電池工業の道具づくりに対する縦横無尽の発想と創造意欲には、ほんとうに頭が下がります。

次回は集魚灯をお送りします。釣り好きの方、必見です!

いもづる式に開発されたLEDライト商品群

福田收さん

パナソニックデザイン社 HAデザイン分野 HA商品開発グループ 設備チーム 主任意匠技師の福田收さん

リチウムLEDビームライト

リチウムLEDビームライト。光を拡散させたくないときには集光を、全体を照らしたいときには散光と、ふたつの機能をもたせた。

集光タイプで照らした地図と散光タイプで照らした地図

集光は、山小屋などで早朝発つときに周りに光が拡散しないので便利。
散光は、足下を広く照らすときに便利。

2008年10月1日、松下電池工業株式会社は、エナジー社に社名を変更いたしました。

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