ここから本文です。

※過去に掲載された記事になります。内容は公開時のものであり、最新の情報とは異なる場合がございます。

追い出せ!有害物質 〜RoHS(ローズ)指令〜

TOPへ戻る 前のページへ戻る 追い出せ!有害物質〜ローズ指令対応プロジェクト〜
試験のしくみのイラスト
色の濃さを計測すると
有害物質量が分かる
六価クロム簡易分析装置の写真
このプロジェクトのために
独自開発された
六価クロム簡易分析装置
4カ国語のテキスト(写真)
テキストは4ヵ国版が用意された。
Step3 -2
誰でも、そして簡単に。
分析技術まで独自開発

おりしも、簡易な分析装置が日本で登場し始めたため、長沼はさっそくこれを採り入れることにした。蛍光X線分析装置と呼ばれる装置で、面倒な前処理がほとんどいらず、試料を入れるだけで5分ほどでモニター画面に結果が出てくる。モニターには、サイエンス系のテレビ番組で見たことがあるような波長が出てきて、波がピークになっている部分が、何の元素なのかが読み取れるようになっている。この分析装置で、鉛、カドミウム、水銀の含有量がわかる。

問題は六価クロムだ。この装置でクロムの含有量も把握できるが、クロムといっても主に3種類があり、禁止物質の六価クロムかどうかまでは突き止めることができない。では、どうするか。何と長沼は、分析装置メーカーとの共同作業で、六価クロム専用の簡易分析装置まで作らせてしまったのである。いやはや、これには驚いた。唖然とする私の前で、長沼が写真を見せながら嬉しそうに説明を始める。

「ミネラル水のお湯の中にネジを入れてクロムを溶かしだし、そこに試薬を入れると、赤紫色になるんです。色の濃度は六価クロムの濃度に比例しますので、その濃度を、機械に入れて測ればいい。理科の実験みたいに、短時間で、誰でもできるんです」

市販の試薬とミネラル水を使って短時間に分析できるこの手法は、特許申請中の松下電器のオリジナル技術だ。

一連の簡易分析で疑わしい値が出てきた場合は、さらに高精度の分析を行う必要があるが、高精度分析については世界各地に窓口がある分析専門の会社に委託することにした。特定臭素系難燃剤2種は、前述の蛍光X線分析装置で臭素の有無だけ分析し、詳細な分析が必要な場合は、同じく外部委託する。6物質すべてに二重のチェック体制を整えたワケで、〈RoHS指令〉で禁止されている有害化学物質を「製品中に絶対に入れさせない」という、並々ならぬ決意が感じられる取り組みだ。

簡易分析用の蛍光X線分析装置と、六価クロム簡易分析装置は、サプライヤーからの部品を受け入れるすべての事業場に配置した。総額で、実に19億円もの投資である。

次は社内の徹底啓発
「テクノスクール」開校

長沼が手がけたもう一つの仕事は、化学物質に関連した情報や技術を松下電器グループの社員に啓発して回ることだ。全社をあげて「有害化学物質の排除」を徹底させるには、プロジェクトに関わるメンバーが精通しているだけではとても追いつかない。〈RoHS指令〉に代表される世界各国の環境規制の動向や、有害視されている物質の基礎知識、代替物質や分析に関する技術情報などを、すべての事業場や工場単位で啓発しておく必要があるのだ。

社員向けの勉強会は、「テクノスクール」の名で国内と海外17カ国で開催され、事業部門ごとに行われた自前のスクールもあわせて、総勢4000名以上が受講した。この4000名あまりは、いわば「伝道者」のような存在で、スクールを受講した後は、それぞれの職場で「有害化学物質の排除」を末端まで徹底させていく役割を担った。前述の環境監査に出向いた人間もいる。

セミナーのテキストは、生産コア技術研究所や、松下テクノリサーチがこれまで培ってきたノウハウを盛り込み、長沼が自前で作ったものだ。海外には日本人以外の社員も多いため、日本語、英語、中国語、スペイン語の4カ国語版を用意した。

「テクノスクール」を開いたのは2004年1月から2005年の初めにかけてだが、この間、〈RoHS指令〉の詳細が徐々に明らかになったり、新しい代替技術が登場したりと、状況が刻々と変わってきたため、テキストは改版を重ね、最終的には13版まで発行された。

さらに、前述の簡易分析法を確立したことを受けて、部品受け入れ時の分析を担当する技術系社員に対して、実習を交えつつ作業のイロハなどを教える技術スクールも別途開催している。

各国で行われたテクノスクールの写真
各国で行われたテクノスクールのもよう。
わずか1年半あまりで
ここまで来た。

部品受け入れ時の分析体制を確立し、サプライヤーとグループの隅々まで情報の共有化を進めていったのは、「製品有害物質不使用プロジェクト」が発足した2003年6月以降、わずか1年半あまりの間のできごとである。この間、業界全般の動きを見渡してみれば、一部の国内メーカーを除いては、おおむね、代替化を終えた部品をどうやって調達したらいいのか、四苦八苦していたのが実状で、受け入れ検査などは二の次だったといえる。

かなり先行した取り組みとなったワケだが、これについて長沼は「早くから研究を進めてきたことが、結果的に実を結んだ」と強調する。

「〈RoHS指令〉が発令されてから慌てて取り組み始めていたとしたら、間に合わなかったかもしれませんね。それ以前から、各国の化学物質規制について法律を調べ、2001年には松下電器として自主規制を策定して、化学物質の削減などに取り組んでいたんです。

環境面での分析をコツコツ続けてきた実績は、六価クロムの簡易分析法の開発に生かすことができました。規制が厳しくなってきたら、いずれ分析の専門家でない人も分析装置を使いこなさなければならない時代がきっと来る。そう思って温めていたアイデアなんです」

長沼が環境関係の分析に関わり始めたのは、1972年のことだ。公害が社会問題化し、公害対策の施策を取りまとめることを主眼に現在の環境省(当時は環境庁)が誕生した翌年である。以来、分析一筋に黙々と仕事をこなしてきた積み重ねが、今日に生かされた。

技術面をしっかり支えるエキスパートの存在が、今回のプロジェクトの大きな成功要因になったことは間違いない。

松下グループの環境への取り組み
松下グループの環境への取り組み(年表)
クリックすると別画面で表示します。
|
|
|
|
|
|
|
|
トップへ | Step4-1へ