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追い出せ!有害物質 〜RoHS(ローズ)指令〜

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錆を防ぐ六価クロムのイラスト

六価クロムは酸化しやすく、その酸化皮膜には腐食に抵抗する作用がある。
もし使えなくなると…

業界初の鉛フリーはんだ製品となったポータブルMDプレーヤーの写真

1998年、世界初の
鉛フリーはんだ製品となった
ポータブルMDプレーヤー。

「鉛フリーはんだ」開発ストーリーはこちら

ながぬま ひとし氏の写真
株式会社 松下テクノリサーチ
物づくり解析グループ 
環境コンサルティングチーム
チームリーダー 長沼 仁(ながぬま ひとし)
有害物質が部品に混入のイラスト
有害物質が部品に混入していても
人間の目にはわからない。
Step3 -1
有害物質を一切入れさせない
鉄壁の守りに、社員達は挑んだ。

有害化学物質を排除することが、ものづくりの現場にどれほどの影響を与えるのか。化学に不案内な人にとって、なかなか実感がもてない部分もあるだろうと思う。「法律で禁止されるのなら、使わなければいい。ただそれだけのことではないのか」と素朴な疑問を抱く人もいるに違いない。

確かに、使わなければいい。ただ、すぐに排除することができるなら、これほどのプロジェクトにはならないのも事実で、「ネギ抜きラーメン」のように簡単にいかないところが悩ましい。21世紀を迎えてからとくに厳しく規制されるようになった6種の化学物質にも、これまで使われてきた理由は、それぞれあるのだ。

例えば「はんだ付け」に鉛が重宝されてきたのは、比較的低い温度で溶けるため作業性が良く、周辺の電子部品に対して、温度による悪影響を与えにくいのが主な理由だった。また六価クロムは、ネジ類などの錆止めに用いられてきた。表面に傷がついても傷口をふさいでくれる「自己修復性」があるため、品質の高い製品づくりには欠かせない物質だった。

カドミウムは、頻繁にスイッチをオン・オフさせるような接点部分の耐久性を高めたり、電線ケーブルの被膜を形成するための安定剤、着色剤として長年使われてきた。水銀は蛍光ランプのガラス管内に封入されて発光には必須のものとなっているし、特定臭素系難燃剤2種はパッキンやフィルターのプラスチック材料として秀でた特性をもっていた。

まずは、はんだの鉛フリー化に挑戦

相応の理由があって使われてきたモノを、使わないで済ませるには、同等の機能が得られる別の材質を探し当てなければならない。使う物質が変われば製造工程や製造条件も変わってくるし、新しい物質を使うことで品質面や信頼性に影響を及ぼさないかチェックする必要もある。すなわち、ものづくり全般に影響が及ぶのだ。

松下電器がいち早く代替化に成功したものに、「はんだ」から鉛を排除した「鉛フリーはんだ」がある。

松下電器グループは、欧州で〈RoHS指令〉が表立って議論される以前の1994年から基礎的な研究を始め、1998年に世界初の鉛フリーはんだ製品(ポータブルMDプレーヤー)を発売。

2003年3月には、NationalとPanasonicブランドの全製品で、部品から完成品に至るまですべての「鉛フリー化」を完了している。

これを先導したのは、生産技術の革新を担う生産コア技術研究所だ。今回の「製品有害物質不使用プロジェクト」でも技術部会の一員に名を連ねてきたが、もう一つ、材料研究の分野で専門的なノウハウを発揮した会社に松下テクノリサーチがある。同社企画グループ(当時)の長沼 仁は、材料分析や材料開発ひとすじに取り組んできたベテラン化学屋。これまで登場してきたような、熱い男たちとは対照的に、冷静に黙々と仕事をこなすタイプだ。

探せ!代替物質

原則禁止とされた6物質中、鉛以外の5物質について、前述の生産コア技術研究所とも役割分担しながら代替化を先導してきた長沼は、とくに六価クロムの代替化に注力したと語る。

「〈RoHS指令〉が発令された2003年2月の時点で、他の禁止物質については代替化の方向性が見えていましたが、ネジの被膜に使う六価クロムの代替化は答えが見いだせず、重点的に取り組む必要がありました。

類似のクロムめっきを使う方法もありましたが、ネジは締め込む際に傷がつきやすいため、傷口を自己修復して錆止め効果を維持できる六価クロムの良さに、どこまで近づけるかが焦点でした。

そこで、国内のめっき加工会社やネジのメーカーに足繁く通っては情報を集めるなかで、三価クロムを使っためっき処理で、従来と同じくらいの効果を発揮できるネジがようやく出来上がったのです。これまで三価クロムだけを使ったネジは防錆試験をパスできませんでしたが、これもクリアすることができました。六価クロムを使ったネジのような美しい金色ではありませんが、外観上もかなり近づけることができたんです。

六価クロムの代替化は業界の中でも、かなり早かったと自負しています」

こうして6つの禁止物質すべてについて代替化のめどをつけ、これらの情報は、必要とするサプライヤーに随時フィードバックした。並行して、代替化を済ませた新しい部品の信頼性試験も進めていく。

有害化学物質を使わずに、従来と同等品質の「ものづくり」ができる道筋が、ようやく見えてきたのだった。

万が一、禁止物質が混入していたら?

長沼は、このほかにも、いくつか大きな成果を残している。まず筆頭に挙げられるのは、社員の誰でも手軽に有害化学物質の有無を分析・確認できる分析体制の構築だ。

これまでレポートしてきたように、有害化学物質を使わない「ものづくり」については代替化のめどがついたし、部品を供給してくれるサプライヤーには有害化学物質の排除を義務づける施策を講じ、製造現場に出向いて環境監査まで実施してきたわけだが、それでも人間がやることだから初歩的なミスはあり得る。これを水際で食い止めるため、部品の受け入れ時にいつでも分析できる体制を整える必要がある。

つまり、「使わせない」だけでなく、万が一、使われてしまったとしても納入時に「入れさせない」という鉄壁の守りを固めようというワケだ。

ただ、従来の分析装置は、前もって部品を細かく粉砕したり、酸やアルカリで分解させるなどの前処理作業が必要で、材料分析に手慣れた人間でないと、とても使いこなすことができないシロモノだ。分析結果が出るまで時間がかかるという難点もある。グループ全体で世界各地に300カ所以上ある工場すべてに分析の専門要員を派遣するわけにもいかない。

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