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医学関係の用語解説

胃カメラ

胃がん、胃かいようなどの診断のため、胃の中に差し込み、体外で遠隔操作をして、カラー撮影を行うカメラ。1950年、日本の発明で、がんの早期発見に威力があり、急速に普及した。
カメラの直径は12.7mmで、連結部の直径は10.2mm、固定焦点、固定絞りの広角レンズ(焦点距離f=3.0mm、明るさF1:10、画角80°)でシャッターは、タングステン豆ランプの瞬間せん光による。
胃袋に空気を送り、腹壁を透かす光で、カメラの位置や方向を容易に知ることができ数分で撮影を完了できる。
従来のガストロスコープ(胃鏡)は硬直しているため、そう入する時の苦痛が大きかったが、ファイバーオプテイックス(ガラス繊維内を全反射で光束を伝えるもの)の応用による、ガストロスコープと併用のガストロカメラが開発され、ファイバースコープで観察しながら、撮影することが可能になった。
レンズと光源以外は体腔(たいくう)内に入れる必要がないものが開発され、苦痛は軽減された。

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鍼灸(しんきゅう)用具

身体表面のあらかじめ定められた経穴に針を10〜50mmの深さに刺し、また艾(もぐさ)を用いて皮膚上に温熱刺激を与えて病気を治療する方法。
中国で漢時代(紀元前2世紀ごろ)に始まり、日本には奈良時代(8世紀)に伝えられ、庶民の医療法として広く普及し、現在も広く国民に利用されている。
鍼(はり)は通常、太さ0.20〜0.33mmの銅鍼が用いられ、鍼先は鋭く、刺し入れ時にはほとんど痛みを感じさせない。
艾(もぐさ)は よもぎを乾燥してさらしたもので、2〜5gを丸めて経穴上に置き、線香で点火して燃焼させる。燃焼温度65〜130°C、病気によってはあまり熱を感じない。回数は1か所につき5〜10回繰り返す。
鍼灸治療は、神経系、消化器、循環器、呼吸器、泌尿器、内分泌系、婦人科、眼科、小児科、耳鼻咽喉(じびいんこう)科などのあらゆる疾患に適用されている。

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タカジアスターゼ

各種の酵素を含有する乾燥粉末。
医薬用消化剤としての用途をはじめ、各種の食品、飼料の製造に利用され、また含有する酵素のうち、特にα-アミラーゼ、リボヌクレアーゼT1およびT2などは、生化学研究上の重要な試薬として、抽出、精製、純化された形で製造される。
1894年、高峰譲吉が、日本古来の伝統技術の米こうじ作りにヒントを得て発明した。小麦麸(ふすま)の蒸し煮したものを培養基とし、これに日本こうじ菌の胞子を植え付け、適温を与えて発芽生育させ、十分に酵素を生産、蓄積させた後、水で抽出し、この抽出液にアルコールを加えて、沈殿させた酵素混合物を、低温乾燥粉末化したものである。また収納品のジアスターゼ発酵菌は、タカジアスターゼの生産に使用している代表的優良菌株の一株を選び、その胞子を永久保存の形態にしたものある。

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エフェドリン・ナガイ

1885年、長井長義によりEphcdra sinica stapf中から、分離発見されたアルカロイドで、同氏により合成も行われた。
一般名、塩酸エフェドリン。薬理作用としては、1呼吸器系に対しては、気管支平滑筋けいれん緩解(かんげ)作用ならびに気管支分泌抑制作用がある。
アドレナリン、イソプロテレノールより弱いが持続的である。また延髄の呼吸中枢を刺激して、分時呼吸量を増加する。
2循環器系に対しては、定期的に アドレナリンと同様の作用を示すが、効力は1/100〜1/200、作用持続時間は7〜10倍、その他平滑筋弛緩(しかん)作用、中枢神経興奮作用がある。
喘息(ぜんそく)、気管支カタル、一般せき、百日ぜき、盗汗、夜尿症、一般心臓衰弱、止血、痔(じ)疾などに効果がある。

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テトロドトキシン

各種のマフグ属、特にトラフグ、マフグの卵巣から抽出されて、精製、結晶化されたふぐ毒の主成分で、約1リットルの卵巣から10gの結晶が得られる。
1902年、田原良純により精製毒が得られ、テトロドトキシンと命名された。
1913年、精製ふぐ毒が鎮痛鎮疼(ちんとう)、鎮静剤として発見され、リウマチ神経痛などの薬として用いられている。1952年、三共(株)の河村正明たちが大量の結晶精製法を確立。ふぐ毒の薬理学的作用は、主として九州大学の福田得志ら日本の薬理学者により解明され、おう吐作用、知覚・呼吸・筋まひ作用、血圧降下作用、抗不整脈作用、胃分泌抑制作用、抗利尿作用などが認められている。
近年生理学者により、結晶テトロドトキシンの特異な、神経インパルスの伝達阻害作用が明らかにされた。きわめて低濃度の液で、興奮時のNa(ナトリウム)イオンの細胞内侵入を、選択的に阻害し、その際K(カリウム)およびCl(塩素)イオンの浸透性には影響を及ぼさない。このような作用を示す物質は、テトロドトキシン以外にはなく、生理学的研究に新しい有力な武器となっている。

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トランサミン

出血症状、アレルギー性炎症性病状に効く医薬品。
分子量157、融点386〜392°C(分解)、白色の結晶または結晶性粉末でにおいがなく、味はやや苦い。
トランサミン1gは水約6mlに溶解するが、有機溶媒にはほとんど解けない。
1.強力な抗プラスミン作用、2.総合的な止血作用、3.抗アレルギー、抗炎症作用などの薬理的特徴がある。
抗プラスミン剤は、日本で生まれ、日本で育ち、日本が世界で最も進んだ多くの研究成果を持っている。1947年三菱化成工業(株)が発明と基礎的開発を行い、慶応大学の林髞と協同研究が進められ、1954年第一製薬(株)がこれに参加。まず抗プラスミン剤イプロシン(ε-アミノカグロン酸)を発売した。
1961年、神戸大学の岡本彰祐が、新しい抗プラスミン剤、AMCHA(4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸)を発表した。
1965年、その有効成分が立体異性体でのトランス体であることが突き止められ、トランサミンが、第一製薬(株)から発売された。

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ニトロミン

ガンの化学療法剤。1949年末当時の東京大学の石館守三および東北大学の吉田富三らの協同研究によって、開発された日本の独創品で、1953年、がんに対する化学療法剤として出現した最初のもの。
これを機にガンの化学療法剤の研究は、世界的に急速な進展をみせた。
白色柱状結晶または結晶性粉末で、融点109〜110°C、水、アルコールに溶けやすく、アセトンにも溶けるが、ベンゼン、エーテルには溶解しにくく、水溶液は酸性を呈す。
適応症はがん腫(しゅ)(胃、肝臓、肺、乳、子宮)、脳腫瘍(のうしゅよう)、肉腫、急・慢性白血病、ホジキン氏病、ケロイド。

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塩酸モルヒネ

モルヒネはアヘンの主アルカロイドで、約10%以上の含有量で存在する。
結晶水を持ったモルヒネは、針状または柱状で、110°Cで結晶水を失って不透明となり、230°Cで溶融し、紫色に変わった後、炭化する。
モルヒネのフェノール性水酸基をメチル化したものはコデインで、そのリン酸塩、塩酸塩を、麻酔鎮痛剤として使用する。皮下注射後、数分で作用が現れ、半時間で極点に達し、数時間後に衰え、約半日後まったく消失する。
モルヒネは疼痛(とうつう)、苦痛感をまひするため、催眠の効があり、呼吸鎮静、せき止め作用、また腸の蠕動(ぜんどう)、胃の運動を静止して止瀉(としゃ)の効を奏する。
しかし鎮静作用と同時に、不快な感覚を忘れさせ、快感を起こし、習慣性があるため、常用すると慢性中毒の原因となる。中止すると禁断現象を生じるモルヒネは麻薬に指定され、医師の許可がないかぎり購入できない。

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ビタミンB1(オリザニン)

1910年、東京大学の鈴木梅太郎が、米糠(こめぬか)の中に、脚気(かっけ)に対して有力な成分が存在することを認め、有効成分の分離に成功。米の学名oryzasativaに基づき、oryzaninと命名した。
1911年、オリザニンの名称で市販されたが、これは世界最初のビタミン剤である。同年、C.Funkは、同様に米糠エキスを研究し、生命に必要なアミンの意味で、Vitamineと命名したが、これが現在のビタミンの名称の起源になっている。
成人の1日必要量は1〜2mgで、欠乏すると、脚気、神経炎、食欲不振、心悸亢進(しんきこうしん)などがみられる。臨床的には、前期欠乏症の治療に用いられた。さらに日本では、類似化合物として、チアゾール核の開裂したチオール型B1誘導体が種々合成され、生体内で組織親和性、持続性のすぐれたものが発見されて従来のB1欠乏症以外に新しい薬理作用による適応症の拡大が行われた。1968年には、年産593tのB1およびB1誘導体が合成されて、世界一の生産を誇り、日本人の健康維持に大きな貢献をしている。

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アミノ酸製剤

アミノ酸輸液は、栄養輸液として最も重要なものの一つである。
従来は、天然のタンパク質を加水分解したものを原料として使用していたが、近年、技術の進歩により、高純度の各種L型必須、ならびに、非必須アミノ酸が工業的に製造可能になり、その輸液製剤は、各科臨床領域で利用されている。
アミノ酸輸液の処方は、多種多様であるが、収納品のプロテアミンXTは、FAO(国際連合食糧農業機構)、WHO(世界保健機構)のタンパク必要量専門委員会が1965年に提示した人乳必須アミノ酸パターン、またMeyerが1960年に提唱した人乳非必須アミノ酸パターンを基準として、必須アミノ酸と非必須アミノ酸総量の比率を1:1に近づけたものである。
なお、製剤は溶液であるが、収納品は原料のみを結晶状態で収納した。実用の製剤にはキシリットを100ml当たり5,000mg配合しアミノ酸の利用効率を高めている。

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総入れ歯

義歯には非常の多くの種類があるが、そのうち歯牙(しが)のまったくなくなった人に適用する総義歯を選んだ。
その床材料としては現在Co-Crまたはアクリックレジンが多く使用されているので、収納品は上顎(うわあご)に前者を、下顎(したあご)に後者を使用した。
人工歯としては現在、陶歯またはレジン歯が使用されているが、後者は耐久性に難点があるので、陶歯を前歯ならびに臼歯(きゅうし)に使用した。
顎模型は大学で標準的な形態の実習教材に使用しているものを用いた。

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避妊用具

1798年、人類の幸福と繁栄のためには人口と食糧の均衡が必要であり、このため人口増加の抑制が唱えられた。しかし性交自体の制限は実行困難なので、その後、受胎予防措置(予防性交)が提唱され、各種の避妊方法が考えられた。
避妊方法には、永久的に不妊状態にする精管結紮(せいかんけつさつ)術、卵管結紮術があるが、日本では優生保護法(1949年制定)で規制されている。
避妊用具は一時的避妊の目的のために用いられるもので、勃起(ぼっき)した陰茎にかぶせて、精子の膣(ちつ)内進入を防ぐためのもので、合成ゴム製の薄くて細長い袋状をした〈コンドーム〉、性交前、膣内に装着し、射精された精液が子宮口の方へ上昇するのを防ぐためのもので、弾力性の金属環にゴム膜をはった〈ペッサリー〉、子宮内に異物(金属製や合成樹脂製)をそう入しておくと避妊の目的が達成されるということから開発された〈避妊リング〉、膣に用いるゼリー状をした避妊薬(殺精子剤)を、性交前、特定の注入器で膣内に注入したり、ペッサリー、コンドームと併用する〈ゼリー〉、などがある。日本では、まだ一般には許可されていないもので、合成黄体ホルモンおよび卵胞ホルモンを主成分にした排卵抑制剤の〈経口避妊薬〉もある。
また排卵期およびその一定期間前に禁欲ないし予防性交を行う荻野(おぎの)式避妊法により確実にするために、基礎体温曲線より排卵期を知るために用いる、専用の〈婦人体温計〉もある。

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※本ページの内容は、タイム・カプセルEXPO'70記録書(1975年3月発行)を引用して掲載しています。社名や組織名など現在とは異なる場合がありますのでご了承ください。


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