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Vol.14 「アスレティックトレーナー(AT)とは」

インパルスを日々応援してくださっているファンの皆様、こんにちは。
今回のコラムを書かせて頂きます、アスレティックトレーナーの高嶋です。

みなさんお元気でしょうか? いや〜、それにしても毎日、ムシムシ暑い日が続いていますね。
インパルスはこの暑さ以上に熱くそして激しく毎日、鍛錬しています!

そうはいっても、猛暑の中でトレーニングを積み上げていくのは、容易なことではありません。
この暑さの中で激しいトレーニングをする為には一工夫も二工夫も必要なのです。

そこで、私たちアスレティックトレーナーというスタッフが暑さ対策にいろんなアイデアを出して、
激しいトレーニングを安全で効果的なトレーニングになるよう、
練習の環境づくりや選手の体調管理に携わってチームをサポートしているわけです。

とは言っても、日本ではまだまだ「アスレティックトレーナー」って馴染みのない人たちですよね?

ということで、今回のコラムをお借りして(勝手ながら)「アスレティックトレーナー」とは一体なに者や、
という疑問にお答えすべく少しディープに解説したいと思います。

実は、日本ではアスレティックトレーナーという明確な立場が確立されていないのが現状です。

歴史を辿ると、1900年代初頭にアメリカでプロスポーツや大学のアメリカンフットボールが盛んに行われるようになった頃、
スポーツによるケガ人が急増したのをきっかけに、応急処置でケアしたり、
テーピングやバンテージでケガの予防をしたりした人達がアスレティックトレーナーの始まりだと言われています。
(個人的にですが、アメリカンフットボールをアメフトではなく、
 本場アメリカで呼ばれているように以下、「フットボール」と呼びますね、笑)

1950年になり、約100人のアスレティックトレーナーが集まり、
現在の全米アスレティックトレーナー協会(National Athletic Trainers’ Association; NATA)という団体が発足されました。
その後、この団体により、アスレティックトレーナーを養成する大学での教育プログラムの統一化、資格の確立、
そして、州や連邦政府へのロビー活動を通して、州法で定める準医療従事者としての免許の確立が行われてきました。
その結果、現在ではアメリカのほとんどの州で準医療従事者としての免許を与えられた職業として確立されたわけです。

現在では、ATCと呼ばれるNATAの資格認定機関が認定した現役で活動しているアスレティックトレーナーは、
アメリカを中心に約4万人存在していると言われています。

日本には、1970年後半に日本人第1号のATCが誕生し(なんと長年にわたりフットボールで活動されています)、
1990年初頭から徐々に渡米し資格を取得された方々が増え、現在では約300人の日本人ATCがいると言われています。
(日本アスレティックトレーナーズ機構; JATO HP より)

また、日本では独自に、公益財団法人日本体育協会(日体協)が認定するアスレティックトレーナー(AT)という資格があります。
日体協ATの歴史は浅く、1964年の東京オリンピックからスポーツトレーナーと呼ばれる競技力向上を目的とした資格が始まりましたが、
そこから枝分かれしたケガの応急処置からアスレティックリハビリテーションを行うAT資格制度が始まったのは1994年からです。

日本では、はり師、きゅう師、あん摩・マッサージ師、柔道整復師、理学療法士など医療資格を持つ者が
ATとして活動するケースが多く、日体協が資格認定するATの役割については、
「医療関係の法律に抵触しない範囲でスポーツドクターとの緊密な協力のもとに、
 総合的に競技者の健康管理を担当することとし、医療資格にはこだわらない」というのが方針です。
(日本体育協会HP より)

アメリカのATCと比べると準医療従事者ではないことが大きな違いなのでしょうか。
(このことが時代に沿わない、数々の問題になっていることが多いのが現実ですが…。
 明確にATを確立するには抜本的な規制緩和や構造改革が必要ですね)


さて、歴史や難しい資格の話はこの辺までにして…

では、実際にどんなことをしているのか。

アスレティックトレーナー発祥の地、アメリカのNATA BOC(NATA Board of Certification, NATA資格認定委員会)によって
2010年に定義されたアスレティック トレーナーの役割・職責です。

1. 傷害・疾病の予防と健康の保護
 (Injury/illness prevention and wellness protection)
2. 臨床評価と診断
 (Clinical evaluation and diagnosis)
3. 応急処置と救急処置
 (Immediate care and emergency care)
4. 治療、リハビリテーション
 (Treatment and rehabilitation)
5. 組織的、職業的な健康と福利
 (Organizational and professional health and well-being)

簡単にまとめると、競技者の体や心のケアやコンディショニングに携わり、
スポーツをする人の健康管理やチーム・組織の安全管理をする役割を担っています。


それでは本題、インパルスの現場ではどうなっているのでしょうか!?

現在、インパルスには3名のアスレティックトレーナーがチームを支えています。

一人目は、昨年からインパルスを陰で支える、見た目はコワモテ、しゃべるとソフトな、本岡AT。

二人目は、この春からインパルスに加わった、コラムVol.4 「新しい仲間」でも紹介された、
自身もストイックにトレーニングを積み重ねる「クロスフィット不思議系」こと、宮川AT。

そして、三人目は、私、同じくコラムVol.4 「新しい仲間」でも紹介された、「本場USA仕込み系」こと、高嶋ATC。

この3名でインパルスの選手の健康管理を行っています。

フットボールはコリジョン(衝突)スポーツと言われ、プレー中にタックルを含む衝突が起こることが
ルール上認められた激しいスポーツです。

ケガをしないようにフィジカル(筋力、体力)やスキルを磨いているものの、衝突による衝撃の激しさから、
フットボールではケガはよく起こります。

しかし、実際は衝突によるケガよりも、それ以外のトレーニング中に起こるケガ、
例えば、急性のケガでは肉離れや捻挫、慢性のケガでは、関節痛や腰痛などが圧倒的に多いのが事実です。
どんなスポーツでも一般的に起こっているケガです。
私たちインパルスATはこういったケガの応急処置、治療、リハビリを毎日行っています。
また、ケガの予防として機能改善/コンディショニングにも力を入れています。

例えば、腰痛。痛いのは腰ですから、痛みのある腰を治療するのが一般的かもしれません。
しかし、私たちインパルスATは、患部以外の体を総合的に評価し、
患部に影響を与えているかもしれない部位や動作を改善することを行います。

仮に、腰痛の原因が腰部の過伸展(腰を反る 状態になること)で起こっているとします。
そして、この過伸展がオーバーヘッド(肘を伸ばしたまま腕を頭の上に持って行く)動作で起こっているとします。(画像1)
これは、実は、肩の可動域が狭く、肩だけでは手を挙げられないために、腰の過伸展を利用して起こっている現象だと評価します。



カラダの評価後は、肩の可動域を広げるリハビリや機能改善運動を指導したり、手技やストレッチなどをしたりして、
肩の可動域を改善し、それによって腰の過伸展を抑制し、腰痛を緩和するということを行っていきます。(画像2)



このような機能改善はケガの予防にもつながります。
腰痛で患部の腰だけ治療していても、原因となる肩の可動域がいつまでたっても改善されなければ、
一時的に症状が良くなっても、また、再発する可能性が高いですよね。

患部の治療で痛みを取ることも、カラダ全体の機能改善で原因を取り除き予防に繋げることも
アスレティックトレーナーとしての大事な役割です。

また、大きなケガをした選手には、 精密検査や診察のために、チームドクターや医療機関と連絡を取り合い、
スムーズに連携できるようサポートするのも私たちATの仕事です。

さて、コラムの始めに書きましたが、暑さ・熱中症対策もATとしての大事な仕事です。
暑い時間帯を避けたり、適度な休憩を入れた練習スケジュールをコーチと一緒に考えたり、
マネージャーやインターン生と協力して適切に選手が練習中いつでも水分補給をできるように環境を整えたり、
選手に日頃から食事や休息をしっかりとるように啓発したりと
私たちATは適切なスポーツ環境を作ることをサポートする役割も担っています。
この他にも選手の健康管理から練習の安全管理までチームを様々な側面からサポートするのが私たちATなのです。


なんだか、長いコラムになってしまいましたね。
ここまで読んで下さったインパルスファンの皆さん、ありがとうございます。

それでは最後に、あまり表には出たがらない(チームを陰ながらサポートするのが使命の)
私たちインパルスATの簡単な自己紹介をさせて頂いて、コラムを締めさせて頂きます。

本岡AT
@資格
はり師・きゅう師
日本体育協会公認アスレティックトレーナー

A経歴
びわこ成蹊スポーツ大学 トレーニング・健康コース 卒業
森ノ宮医療学園専門学校 鍼灸学科 卒業
2013年〜2015  神戸製鋼コベルコスティーラーズ
2015年〜  パナソニック インパルス

B経験
大学の時はサッカー部の学生トレーナーとして活動しました。
その時にパナソニックインパルスに実習で来させて頂きました。
専門学校の時はコナミスポーツクラブの整骨院で働きながら母校のサッカー部のサポートをしていました。

Cインパルスに入ったきっかけ
私が希望したきっかけは実習でお世話になったチームであったことと、
コンタクトスポーツの特性上、様々な怪我をサポートできると思ったからです。
大きな怪我から小さな怪我まで、復帰までを全力でサポートできる、そして心から勝利を喜びあう、
そういった素晴らしい経験が出来ると思ったので、インパルスで働きたいと思いました。

D今の目標
チームの日本一に貢献すること。
選手に100%のパフォーマンスを発揮してもらうサポートをすること。


宮川AT

@資格
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師
日本体育協会公認アスレティックトレーナー

A経歴
日本鍼灸理療専門学校卒
アスレティックトレーナー専攻科修了
2014年〜2017年  チャイナドラゴンアイスホッケークラブ
2017年4月〜 パナソニックインパルス

B経験
専門学校卒業後は、中国へ渡りプロアイスホッケーチームで3シーズン、アスレティックトレーナーとして活動していました。
2017年3月に帰国し、4月からインパルスの一員となりました!

Cインパルスに入ったきっかけ
アイスホッケー同様コリジョンスポーツという激しいスポーツの中で私自身共に成長したいという気持ちと、
私を必要と感じてくださったこのインパルスというチームに恩返しがしたいと思いこのチームの一員になることを決めました。

D今の目標
まずはこのチームで日本一を取ることが今の全てであり、そのためにアスレティックトレーナーとしてベストを尽くすかのみです!

E他コメント
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師とは厚生労働大臣が認定している国家資格です。
資格取得には認定校に3年間通う必要があり、国家試験をパスすると晴れて資格取得となります。
街中にはリラクゼーション、ほぐしなどを称したグレーゾーンのお店が多々ありますが、
マッサージという名前を使用し、施術が出来るのはあん摩マッサージ指圧師の資格をもつ国家資格者のみですので、ご注意を!!


高嶋ATC

@資格
全米アスレティックトレーナーズ協会資格認定委員会公認 アスレティックトレーナー
A経歴
インディアナ州立ボールステイト大学 大学院修士課程卒
同大学 学士課程卒 アスレティックトレーニング学科
2008年〜2014年 カンザス州立大学 Assistant Athletic Trainer
2014年〜2016年 アイオワ大学 Associate Director for Athletic Training
2017年〜 パナソニックインパルス チーフアスレティックトレーナー

B経験
2010年、2011年 、2012年
USA Track & Fieldアメリカ陸上連盟
10種競技アメリカ代表チーム アスレティックトレーナー

Cインパルスに入ったきっかけ
日本においてもアメリカ流のスポーツ文化に理解のあるスポーツであること、
高いレベルでトレーニングできる環境にあり高い意識を持ったチーム、スタッフ、選手をサポートできること、
そして、外国人選手をサポートするスタッフとして貢献できること

D今の目標
アスレティックトレーナーを理学療法士、看護師、救急救命士のような医療従事者として確立すること。
高齢化社会における健康への意識、医療費抑制のための予防医療への関心、学校体育や部活動での死亡事故への対策、
2020東京オリンピックなどスポーツを取り巻く社会環境や関心は確実に変化しています。
屋内全面禁煙や道路標識の英語表記、温泉マークなど施設標識のグローバル化など、
これまでの日本の既成概念では解決できない事柄が変化しています。
アスレティックトレーナーという職業も同じかもしれません。
2020東京オリンピックでは、法の整備は追いついていない可能性が高いものの、
将来、アスレティックトレーナーはスポーツ“現場”の準医療従事者として重要な役割を担うことになるでしょう。
インパルスでの活動を通じて、最も身近に実感している選手、チーム、Xリーグをはじめとする
日本トップリーグ所属の各スポーツ協会、医療関係団体の協力を得て、
アスレティックトレーナーの社会的地位の確立を推し進める活動をしていきたいです。
そのためにも、インパルスの選手には常に心身ともに良い状態でトレーニング・プレーできるように、
常にベストなコンディションで戦えるチームになる為に、アスレティックトレーナーとしてしっかりサポートしていきます!


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【次回の試合情報】
対戦相手 : エレコム神戸ファイニーズ
会 場  : 京セラドーム大阪
日 時  : 2017年8月31日(木) 18:30 KICK OFF

 

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