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NPO法人
野生生物保全論研究会
塚田景子(つかだ けいこ)さん、鈴木希理恵(すずき きりえ)さん

第三者の目で広報を見直し、信頼度も上がり活動も広がりました

団体の活動概要ホームページに行く

野生生物保全とその実践のために、とくに会員の学術的な研究をもとに実践理論や政策提言を行っていくための研究会として1990年より活動を開始。ワシントン条約締結国際会議にも出席してロビー活動を行ってきた。1995年以降は一般の会員も募りトラやゾウの保護基金活動、ワイルドライフカレッジを通した社会への普及啓発活動も進めている。

Panasonic NPOサポート ファンド 事務局より
日本では数少ない、野生生物保全の問題を国際的視野に立って取り扱うNPO団体であり、ワシントン条約に関連する提言や、野生生物の密輸調査、絶滅危惧種保護の啓発などといった専門性の高い分野で、独自の研究理論に基づいた活動を展開しています。
応募時の団体が抱える課題は、活動や提言など事業の成果を社会にアピールする力が弱く、活動を支える会員や寄付を増やすことができないということでした。そこで応募案件では、団体活動を効果的にアピールするための広報活動のボトムアップに取り組みました。申請内容はホームページの改訂事業でしたが、本助成金選考委員会からの助言で、ホームページだけでなく広報全体の見直しを考え、他団体リサーチや専門家を入れた研修を盛り込むというように事業内容を拡大しました。
一年間の取り組みの結果、多くの人の注目を集めるデザイン性の高い広報ツールが出来上がり、団体の知名度・信頼度が以前より高まったことがスタッフ内で実感されています。広報全体の見直しを図る過程で、スタッフの意識・知識の向上が図られ、団体としての統一感が醸成されたことは、団体基盤強化の良い参考事例となるのではないでしょうか。
助成概要
事業名:
広報力アップのための組織基盤事業
申請の目的:
ホームページや会報誌などを含む広報事業全体を見直し、情報発信力と会員獲得を強化し、さらに2007年のワシントン条約締約国会議出席者としての情報発信にも役立てていく。
助成実施期間:
2007年1月1日〜2007年12月31日
助成額:
1,500,000円(事業総費用:2,100,000円)
助成で行った取り組み:
  • 広報事業見直しのための他団体聞き取り調査および専門家を講師に招いた勉強会の実施。
  • 会員獲得を目的としたキャッチフレーズ、ロゴマークなどの刷新とホームページの改訂。
  • ホームページ改訂にともない既存の情報源を整理し、学習ページを設置。入会や問い合わせのページの改良。
NPO法人 野生生物保全論研究会(東京都)事例レポート

 野生生物保全論研究会は、野生生物と共存する社会を実現するための研究会がそのはじまりです。独自の調査や研究の成果を発信し、同時に国際会議への参加や野生生物の保護基金の運営なども行ってきましたが、一方で活動を支える会員や寄付の獲得のために、専門的な内容をより分かりやすく伝えることが課題でした。助成期間中に参加した国際会議での成果も含めて事務局に伺いました。

助成事業の内容と成果

●ホームページの改訂だけでは基盤強化にならない

アフリカンフェスタでのJWCSブース

 野生生物保全論研究会(JWCS)は、当初は大学の先生の勉強会のような集まりでしたが、2001年度にNPOになるとともに、一般に向けてさらに活動を広げてきました。それにともなって広報の見直しの必要性も感じていましたが、なかなか時間も人手も割けない状況でした。事務局の鈴木さんは言います。「ホームページは『ないと恥ずかしい』ので作る、イベントの出展も依頼を受けて決める、といつも受け身の状況でした。そこで、この助成を使ってホームページの改訂を行い、同時に2007年に開催されるワシントン条約締約国会議への参加を視野に、マスコミや社会への情報発信力を強化しようと助成を申請したんです」。しかし、最初のヒアリングで助成事務局から言われたのは、ホームページの改訂だけでは基盤強化にはならないという言葉でした。「どんな層に広報をするのか、そのためにどんな改訂が必要で、その結果どんな効果が出るのか、きちんと考えるように言われました」。そこで、他団体の広報調査、会のキャッチフレーズやデザインといった広報全体の見直しを事業に加え、晴れて助成を獲得したのです。

●他団体を知ることで、自分たちの位置づけを確認

会報誌も新しくリニューアル(左:旧会報誌、右:新会報誌)
リニューアルしたWEBのトップページ

 JWCSは、野生生物保全を密輸などの社会問題的な視点から取り組んでいる数少ない団体。野生生物問題を扱うNPOはほかにもありますが、活動や目的は少しずつ違います。他団体の広報調査ではそうした団体に直接出向いてヒアリングを行いました。「その結果、活動内容と広報と会員層には関係性があること、私たちの会は若い層への広報強化が必要といったことが分かりました」。さらに、WEBデザインや広報の専門家を講師に招き、事務局のスタッフ全員と数名の理事も加えて広報研修を行いました。「会の方向性やデザインなどについて意識を共有すると同時に、顔の見えるリアルな関係とWEBなどを通したバーチャルな関係をきちんと分けて広報を組み立てるようアドバイスを受け、全体の見直しに着手することができました」。会の顔となるロゴマークや、「野生の世界は野生のままに」というキャッチコピー、親しみやすいイラストの表紙で若い層が手に取りやすい雰囲気の会報などを作成し、さらにホームページでは具体的に会員や寄付の獲得につながるよう、トップページに分かりやすいボタンメニューを加えたり、著名な動物写真家に写真をご提供いただき活動のイメージを印象づけるなど、“効果”を意識した改訂を盛り込むことができました。

●国際会議のレポートにもブログを活用

ワシントン条約締約国会議の様子

 そして2007年6月、オランダでワシントン条約締約国会議が開催されました。「JWCSは日本の国内団体として唯一、野生生物取引禁止の立場から会議に出席したので、決議などの議事録をいち早く発信していくつもりでした」。しかし、ここでも一般の人には会議の様子を随時アップした方がおもしろいとアドバイスされ、ホームページに会議速報のブログを立てることに。その結果、“ワシントン条約締約国会議”というキーワード検索でアクセスや問い合わせを得ることができました。さらに、その会議では日本でも人気のあるスローロリスの取引に関する条約が締結されたため、スローロリスのキーワード検索でのアクセスも非常に増え、会議後のメディア露出につながったそうです。「今までは伝えたいという思いが強すぎて、それには豊富な資料やショッキングな写真が有効だと思い込んでいましたが、第三者の意見を聞いて一般の人が何を知りたいのか、改めて考えるようになりました」と鈴木さん。この視点の転換は、以降の広報の考え方にも役に立ったということです。

 

助成事業終了後の波及効果

 組織の位置づけや表向きの顔、情報発信の技術やツールなどを徹底的に見直した成果は、まず国際会議というイベントで試されいくつかの手応えを得ました。しかし、それ以降の活動にも効果はあったのか、さらにお話を聞きました。

●ホームページの改訂で、会の信用度もアップ

 まず、課題であったホームページの改訂は満足のいく形になったのでしょうか。
 「ブログの更新は順調です。新設したイベントや問い合わせ専用のページからのアクセスも増えています。改めて、インターネットを見ている人の多さを実感しました」。さらに、コンテンツを整理して会の理事の紹介や決算報告などを見やすい場所に置いたことで、企業や自治体から寄付や助成の問い合わせが来るようになりました。「会の信用度が増しました。野生生物の学習ページをまとめたことも、教材利用だけでなく会の専門分野をアピールする二次的な効果があったようです」。国際会議をきっかけに知り合ったスローロリスの研究者とは2009年に日本でシンポジウムも開催しました。ブログ以外のコンテンツ更新の遅れや、PC環境によるデザインの乱れなど、残されている課題もありますが、ホームページの改訂は期待以上の成果があったようです。

●助成で得た方法論を使って次のステップへ

 イメージを一新した会報は、内容を活動報告や一般的な情報に絞り、会の要である学術論文などの記事は1色刷の別冊に分けました。その結果、会員の大学教授が授業で使ってくれるようになり、学生たちの評判もいいそうです。しかし、残念ながら会員獲得への手応えはまだ得られていません。デザインをよくしても入会に結びつかないなら継続の意味がないという意見もあり、今後の継続については予算とのバランスも含めて見直しの必要がありそうです。広報力アップの成果は得ましたが、財政基盤の強化は課題として残りました。「財政基盤を強くするためには、大口寄付者へのサービスを図るのか、イベントをやるのか、会員を増やすのか、もう一度考えなくてはいけません。でも、それを考えていく方法論、その基盤は助成を受けて着実に育っていると思うんです」と鈴木さん。次のステップアップは助成に頼らずに頑張りたいと力強く語ってくださいました。

(文:山崎 玲子)

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