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NPO法人
環境ネットワーク・文京
理事長 澤谷 精(さわたに ただし)さん

自主講座を人材育成に展開し、
新たな人材と事業を育てました

団体の活動概要ホームページに行く

文京区が設置した「環境ネットワーク会議」の取り組みを活かし、区民の相互交流の強化、地域の環境情報の収集や提供の円滑化を図り、区民の主体的な活動を支援しようと産・学・民からなる組織として2003年に設立。大学や企業などが多い地域のポテンシャルを活かし、情報誌の発行や行政と組んだ環境教育・啓発事業などを実行している。

Panasonic NPOサポート ファンド 事務局より
 団体の活動拠点がある東京都・文京区は、東京大学、御茶ノ水大学など日本を代表する高等教育機関が集中しているエリアです。代表者の澤谷理事長は、そうした大学の教授陣などに多くの人脈を有しています。本団体は文京区の小中学校を対象に温暖化防止の環境教育活動を実施しており、行政からの要望で、さらに多くの学校で活動を展開して行ける体制を作る必要に迫られていました。一番のボトルネックは学校での環境教育活動を実施する人材の確保ですが、応募案件では支援者を増やしたいというやや漠然とした内容でした。そこで、団体が有する稀有な人脈を活用し、環境教育の講座を実施すれば支援者と人材育成が一石二鳥でできるのではと事務局から水を向けた経緯があります。修正後の事業計画書ではレベル別に3つの人材育成講座を企画され、学んだ人が実際に学校で環境教育を行う機会が用意されていました。学びを実践で活かす道筋があることは、講座参加者のモチベーション向上にもなり、人材育成には好条件だと判断された点が採択のポイントでした。
助成概要
事業名:
学校を中心とした脱温暖化地域づくりに向けた団体の基盤強化、人材発掘、ネットワーク化・能力向上、WEBサイトの整備
申請の目的:
平成19年度より受託予定の、文京区の公立小中学校における環境教育を主体的に行う人材の育成と発掘、およびネットワーク化
助成実施期間:
2006年4月1日〜2007年3月31日
助成額:
991,000円(事業総費用:1,426,700円)
助成で行った事業と成果:
  • 環境保全リーダー育成講座(6回)の実施。
  • 環境教育リーダー育成講座(6回)の実施。
  • 環境教育コーディネーター養成講座(7回)の実施。
  • 上記を実施するための企画、運営、広報などの活動。
NPO法人 環境ネットワーク・文京(東京都) 事例レポート

 NPO法人環境ネットワーク・文京(ENB)は市民、企業、行政、大学と協働しネットワークを組みながら「環境都市・ぶんきょう」の創造を目指す市民団体。環境をテーマに区との協働事業、区内大学とのインターンシップ事業、自主講座の開催などの実績を積んできました。事業に継続的に関わる人材の確保が課題でしたが、助成によって自主講座を人材の発掘と育成につなげ成果を出しています。理事長の澤谷精さんと、外部スタッフとして関わる中村洋さんにお話を伺いました。

助成事業の内容と成果

●受託事業の継続に必要な人材の育成を

 NPO法人環境ネットワーク・文京(ENB)は、文京区とともに「文の京エコスクール大作戦」事業を行っています。区内のモデル校で環境教育の授業を行い、子どもたちの行動で省エネを推進しようという試みは評価も高く、次年度よりさらにモデル校を増やし50/50プロジェクト*として発展させることになっていました。「一緒に活動してくれる地域の学生たちは熱心ですが、彼らは卒業するといなくなる。これでは事業の継続性に問題が出てくると考え、人材を育成しようと助成に応募しました」
 実は応募時の申請事業は、助成決定前のヒアリング後に内容を変更しています。「はじめは事業案内パンフレットやWEBを整備して、文京区内の多様なネットワークに情報を発信しつつ、人材育成研修会を展開しようと考えていました。しかし、『受講した内容を、50/50プロジェクトで実践できるのが魅力』といわれ、それを意識した講座を中心に事業を組み替えたんです」
* 「フィフティ・フィフティ プロジェクト」公立学校において省エネで削減された経費のうち50%を学校に還元、50%を自治体が受け取るというドイツ発の取り組み。

●地域の高いポテンシャルを人材育成に活かす

 2005年に自主事業として「市民環境講座」も開催していました。文京区内の大学や企業のつながりで集めた講師陣は、環境分野の一線で活躍する国立大学教授や企業人ばかり。有料の大きなイベントにもひけをとらない錚々たるメンバーです。また、澤谷さん自身、定年後に東京大学大学院研究生になって、いろいろな講義を聴き、そこで出会った教授に研究生の立場からNPO活動への協力をお願いしています。「その財産を活かし、自主事業を人材育成講座として内容を組み直そうと考えたわけです。助成事業では3つの講座を設け、修了者は区内で行う私たちの環境教育活動に有償で従事できるようにしました」。講座の広報は、区内の公共施設や教育関係機関に配布している会の情報誌『知恵の輪ねっと』での告知と、メーリングリストを使って行いました。
 その結果、「環境保全リーダー養成」では『子ども環境白書』の解説や植物園でのフィールドワーク、化学分析実験など計6回の講座に中高生から社会人まで33名が、「環境教育リーダー養成」では環境教育の専門家や教員などの講義と、現場での調整やプログラム作成を経て実際に学校で授業を行う7回の講座に25名が、そして「環境教育コーディネーター養成」では、協働についての講義や区内の現場の視察、教育関係者との討議など計6回の講座に23名が参加しました。いずれも、予定した参加者数を上回り、成功を収めました。

実施した養成講座の概要
講座名対象内容
環境保全リーダ養成講座環境のことを考え行動しなくてはと思っている人区内大学などの協力を得た環境問題の基礎講座
環境教育リーダー養成講座環境教育手法を学んで現場で活動したい人環境教育の手法の学習や現場での研修
環境教育コーディネーター養成講座学校教育の環境学習をコーディネートしてみたい人環境学習をコーディネートする手法の学習や現場での研修

●地域貢献をキーに、専門学校の学生も参加

 講座への参加だけではなく、今回の課題であった団体の活動に継続的に関わる人材の確保という面でも大きな収穫がありました。それは、横浜デジタルアーツ専門学校の学生たちの参加です。「地域貢献と関わりながら卒業制作に取り組ませたい」という学校側の思いから、5名の学生が参加しました。「学生たちは、講座を受ける一方で実習授業の教科書を冊子にまとめてくれました。編者が私たち“リーダー養成講座”、制作・デザインは学生たちという形です。専門技術と若いセンスを活かした、かわいい教科書ができました」。学生たちも実際に授業で使うものを制作するということで、非常に意欲的に取り組んだそうです。もともと何らかの成果物は作るつもりでしたが、思わぬことから本格的な教科書ができあがりました。印刷費は別予算から捻出しましたが、これも助成事業の成果のひとつといえるでしょう。一方で、コーディネーター講座については、目標参加人数は達成したものの、想定していたスキルのある人材の確保にはいたらず、カリキュラムを見直すことにしました。

助成事業終了後の波及効果

 講座自体は大きな問題もなく終了し、まもなく1年がたちます。その後、予定した人材は持続的に確保されているのか、区から受託した事業のスタッフはどうなったのか、さらに詳しく現状を伺いました。

●助成事業が発展し、文京区の新規事業に

 「まず、大きな成果としては、この『環境学習リーダー養成講座』を文京区が主催、われわれが企画運営として継続していくことが決まりました。これはまったく新しい事業です。まずは3年やりましょうということで、今年で2年目を迎えます」。これまでも区の環境対策課とは事業を通してつながりがありましたが、2005年の市民講座に区の協力を求めたときには断られていたそうです。しかし、自主事業、助成事業と2年間の現場を見てもらい、ようやくその必要性を理解していただけたというわけです。
 講座の内容は、助成事業の「環境教育リーダー養成講座」の延長です。運営は養成講座の受講生が手伝います。横浜デジタルアーツ専門学校も、このプロジェクトへの参加が卒業制作の一環として受け継がれ、次年度の新しい学生に加え、卒業生も何名か残って参加しています。これは、助成事業による基盤強化の成果といえるでしょう。今年は座学と実地研修を合わせて全8回の講座とし、8割出席した人には区長から卒業証書が出ることになりました。これは講座と団体の信頼度アップという意味で大きなメリットです。また、講座の告知についても、区の事業となったことで区報に掲載できるようになり、認知度や信用度があがりました。

●人材育成を講座という形でひとつの仕組みに

 懸案だった50/50プロジェクトも予定通り動き始めています。この春には新しいモデル校も決まり、こちらもリーダー養成講座の受講者に現場を手伝ってもらいます。「ただ、計画通りコーディネーターも育っていれば、区内の31の小中学校で一気に事業を広げられたんですが、それはできませんでした。現在は私たちがその役を担いながら、モデル校を少しずつ増やしています」。コーディネーター養成講座は、コーディネーターという役割が理解しにくい上に、講座のレベルも高いため参加者が増えませんでした。「今から考えると、チラシのキャッチコピーも固すぎたかもしれないし、課題は多いです」。この講座には、同時並行で行っていたリーダー養成講座からの継続受講と、企業退職者などスキルのある社会人との参加を見込んでいたのですが、実際には1年で2つの講座を履修するのはスケジュール的に厳しかったと終了後に実感したそうです。環境教育の知識を学ぶことには積極的でも、現場で教えるのは腰が引けるという人が意外に多いことも、やってみて分かりました。「また、講座の内容に学校の授業を取り入れたことはよかったのですが、1回の授業に送り込める人数は限られていて、総合学習のカリキュラムに合わせた調整が難しくスケジュールが遅れる問題もありました。これは、学校との協働の課題としていい経験になりました」
 人材育成は継続的にやらなくてはいけない組織の要。それを講座という形で、ひとつのしくみにした点は大きな成果です。大学や企業といった地域の財産をうまく活かしながら、今後も積極的に活動を続けていただきたいと思います。

(文:山崎 玲子)

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