日本クリニクラウン協会
塚原成幸(つかはら しげゆき)さん
団体設立後の間もない時期より、持続的な成長に向けて組織基盤の強化に取り組み、着実に活動を発展させている団体です。
- 事業名:
- 入院中のこどもが笑顔になれる環境創りを行うクリニクラウン(臨床道化師)養成事業(2007年)
クリニクラウン(臨床道化師)従事者ブラッシュアップ研修(2008年)
- 申請の目的:
- 2007年:病院訪問を行える確かな知識と技術を持ったクリニクラウンの養成
2008年:医療関係者や当事者の期待に応えられる、より高度な専門性を持ったクリニクラウンの養成 - 助成実施期間:
- 2007年:2007年1月1日〜2007年12月31日
2008年:2008年1月1日〜2008年12月31日 - 助成額:
- 2007年:1,500,000円(事業総費用:1,503,784円)
2008年:1,400,000円(事業総費用:1,400,000円)
- 助成で行った取り組み:
- 2007年:オランダでの「クリニクラウン指導者スキルアップ研修」、クリニクラウンの「公開オーディション」「養成トレーニング」「臨床研修」および「臨床道化師認定試験」。
- 2008年:「臨床道化師従事者向けブラッシュアップ研修(計8回)」と「臨床道化師フォーラム2008」の開催および事務局スタッフ研修。

クリニクラウン(臨床道化師)とは、入院している子どもたちに笑顔とふれあいを届け、療養や療育環境の向上の手助けをするスペシャリストです。日本クリニクラウン協会は、その育成と普及を目的に2005年に設立されました。しかし“道化師”という言葉のイメージが先行しがちで、療育支援の側面をもっと理解してもらうことが人材育成のためにも活動支援のためにも重要な課題となっていました。その課題と取り組んだ2年間の継続助成事業について事務局長に伺いました。
助成事業の内容と成果

団体が設立された2005年当時、国内のクリニクラウンはわずか2名でした。クリニクラウンは入院している子どもに娯楽を届けるのではありません。「ときには集中治療室にいる子どもに、発達援助の視点でかかわり、療養生活もサポートする専門的な仕事なのです」と事務局長の塚原さん。クラウンの先進地といえる欧米では、その認知度も高く、プロの道化師であった塚原さんはオランダのクリニクラウン財団と連携して日本での活動を始めました。発足には外資系企業、医療関係者、患者会の組織などさまざまな人が集まり支援資金も確保しました。「オランダ総領事館も全面的に支援してくれ、最初の2年で団体の認知度も上がりました。しかし、真の活動内容の理解と質の高いクリニクラウンの確保が追いついていなかったんです」と塚原さん。医療現場で活動するだけに、より質の高いクリニクラウンと信頼されるための組織基盤を作らなければと考えて、助成の利用を決めたのです。

初年度の助成の柱は新しい人材の育成でした。まず事務局スタッフがオランダのクリニクラウン財団を視察。「年間予算は10億円規模、専従スタッフも100名近い組織です。国民の理解を得て洗練された活動を行うノウハウを学びたかった」と塚原さん。研修は約1週間。初日に日本の活動をプレゼンテーションしたところ、予想以上の速さで進む日本の取り組みに驚かれたそうです。「おかげで、主要部署の担当全員に会えました。私たちも、使命を全うするために裏方の仕事がいかに大事か、それをいかにアーティスティックにやるか、大きな刺激と学びを得ました」
春からは新人クリニクラウンのオーディションと研修を開始。今までも年に1回、大阪で行っていましたが、この年は助成金を使って東京でも開催しました。その結果、例年よりも多い95名の応募者を得て、選考に残った15名にトレーニング研修を実施。そこから5名が臨床研修に進み、トレーナーの指導のもと、実際に病院の現場で経験を積みます。今回は過去3回の研修で最大の人数でした。最終的に認定試験の合格者は1名、3名が継続研修という結果に。「認定試験に受からないとクリニクラウンとは名乗れません。表現者として優れていても、臨床活動では別の資質も求められるからです。悩ましいところですが、そのハードルは安易に下げられません」
クリニクラウン従事者へのブラッシュアップ研修
「臨床道化師フォーラム2008」
2年目の助成は、現職クリニクラウンのスキルアップを柱に据えました。既存の10名のクリニクラウンに3名の研修生を加えた計13名にブラッシュアップ研修を実施。従来の自主参加研修ではなく、交通費を支給して全員参加としました。講師も、身体表現、コーチング、教育学、医療とさまざまな分野の専門家を迎え、全部で8回開催。「一流の方から直に指導を受け、さらにクリニクラウンについても話をする機会を得て、知識だけにとどまらない濃い内容になりました」
そして8月には「臨床道化師フォーラム2008」を開催。「必要なのは子どもを単に笑わせることではなく、子どもが子どもらしく過ごす時間を保障すること。クリニクラウンは成長発達を支援する手段のひとつだということを、臨床現場での事例とともに発表しました」。会場には、医療関係者、教育や保育の関係者から学生まで約100名が参加し、活動の理解を広めるよい機会となりました。「アンケートの回収率も高く、熱心な書き込みは私たちの自信にもつながりました」
また、事務局スタッフの研修として、各自の目的に応じて広報や会計業務の外部研修にも参加。医療系の学会などにも積極的に参加して、医療現場で行われている取り組みで自分たちの活動に活かせることはないか検討するなど、組織の基盤固めにも力を入れました。
助成事業終了後の波及効果
2年間の助成で新たな人材も確保しましたが、まだ十分とは言えません。引き続き助成継続の選択もありましたが、協会はその道を選びませんでした。助成の成果と継続を選ばなかった理由について、引き続き伺いました。

人材育成に関しては、2年目の8月にも認定試験を実施して3名が合格。続く11月のオーディションでは合格者1名が決まり、2009年6月のトレーニング研修に参加予定です。「オランダは小さな国なので70名のクリニクラウンでニーズを満たすことができますが、日本で同じ事を考えると600名近くのクリニクラウンが必要になる。これは非現実的です。今後は、いろいろな意味で日本ならではのやり方を考えていかなければと思っています」と塚原さん。
また、初年度に行ったオランダでの研修が事務局に与えた効果は非常に大きかったようです。「オランダではスタッフ全員が仕事に高い誇りとやりがいを持っている。それは事務方も同じです。それを肌身で感じて、今まで現場に対して一歩引いていた事務局スタッフが、主体的に現場に提案できるようになりました」

2009年に助成を申請しなかった理由については、「2年間で多くのものを吸収したので、それを振り返る時期が必要だと思ったんです。本当の成果を出すのはこれからですので、また必要なときに助けていただきたいです」と塚原さん。パナソニックNPOサポートファンドの報告会や事務局とのやり取りで築いたネットワークは今後も大事にしていきたいとのこと。東京の事務所開設も今後の課題です。「サポートファンドの事務局から、卒業生としてまた顔を出してくださいと言っていただけたことは嬉しかったです。こうした人間関係は、お金以上の価値がありますから」
2009年は「臨床道化師フォーラム2009」の開催も決まり、さらに8月7日を「あかいはなの日(RED NOSE DAY)」として大々的に啓発する予定。クラウンのシンボルである赤い鼻を1万人の人に購入してもらい、7日の12時から1分間その鼻をつけることで、笑顔は人を幸せにするということを実感してもらえればと計画しています。収益は入院している子どもたちの療育環境改善に活用し、引き続き力強く次のステージをめざして活動を進めているようです。
(文:山崎 玲子)

