A SEED JAPAN
木村真樹(きむら まさき)さん
鈴木さと子(すずき さとこ)さん
- 事業名:
- 青年活動のネットワークとエンパワーメントを創出するウェブサイトの再構築(2004年)
青年を対象としたエコライフ推進のための広報基盤整備、人材育成システムの確立(2005年)
- 申請の目的:
- 2004年:WEBサイトの再構築とスキルアップ。新コンテンツで共感と参加を促進。
2005年:会報誌の新装とスキルアップ。人材育成研修、広報ツール等の改訂による会員拡大。 - 助成実施期間:
- 2004年:2004年1月1日〜2004年12月31日
2005年:2005年1月1日〜2005年12月31日 - 助成額:
- 2004年:705,000円(事務局 事業総費用:12,628,448円)
2005年:996,000円(事務局 事業総費用:14,516,425円)
- 助成で行った事業と成果:
- WEBサイト再構築と同時に、サイト運営の研修も行い運営用マニュアルを作成
- コンテンツに活動年表と実績、活動ノウハウ集、「エコ貯金ナビ」を追加
- 会報誌のリニューアルと同時に、編集の研修も行い制作マニュアルを作成。団体パンフレットのリニューアル
- 人材育成のため新会員を中心にスタディーツアーを企画・実施する研修を実施

A SEED JAPANは会員数約900人(申請当時)、事務局の年間予算約2000万円の規模を持ちながら、常勤スタッフはわずか2名。会員の多くが10代、20代の青年です。環境問題をテーマに、会員が主体的に事業を企画・運営・実行し、それを平均年齢25歳の理事たちが支えています。青年を惹きつける広報力と、入れ替わりの多い会員のスキルをどう高め活用するかが組織の課題。2年継続助成の経緯と成果を、当時と現在の事務局長に伺いました。
助成事業の内容と成果


「僕が活動に関わり始めたきっかけのひとつは、A SEED JAPANの活動紹介ビデオなんです。カッコよくて、こういうセンスの団体なら一緒にやりたいと思った。でも、入ってみたらWEBサイトや広報物はぜんぜんイケてなかったんですよ」と、申請当時の事務局長、木村真樹さん。活動内容はもちろん大事ですが、若者の情報窓口となるWEBの見せ方は重要です。しかし当時は、デザインや更新管理は担当任せで、会員獲得に力を発揮できていませんでした。「最初にサイトを作った担当からの引き継ぎが不十分で、専門のスキルがない後任者は手が付けられなかったんです」。そこで、まずサイトを整理しようと申請プランを練りました。もっとも大事なことは再構築したサイトを自分たちで維持管理できるしくみ作りです。A SEED JAPANの活動は会員の自主性に任されていますが、会員の年齢層が若いため進学や就職で定着が難しいという問題を抱えています。そこでプロのデザイナーや技術者に頼み、サイトの進行管理やデザインの助言、制作の研修を実施し、学んだ加工技術や色彩学をマニュアルという引き継げる財産にして、誰もが共有できるようにしました。
同時に、団体の歴史や年次報告、役員名簿なども整理してWEBに掲載。さらに、貯金などの経済活動から環境を考えてみようという新事業「エコ貯金」に関するコンテンツ、A SEED JAPANの活動ノウハウをまとめた書籍『NGOの基礎知識』からのコンテンツも新たに加えました。「この作業は、企業との協働が増えてきたなかで、信用度をあげるためにも重要でした。また、自分たちのノウハウの再整理にもなりました」
- A SEED JAPAN http://www.aseed.org/
- 活動ノウハウ集 http://www.aseed.org/knowhow/


A SEED JAPANでは、次年度も継続して助成を受けて人材育成に取り組みたいと考えていました。「そこで、初年度の助成の中間ヒアリングで少しでも成果を出し、良い評価がいただけるように、WEBサイトは4月に開設しました」。その意欲が実り継続助成が決定。さっそく、WEBサイト再構築のノウハウを使って広報ツールの刷新を進めました。取材方法や表記の統一、DTPやデザインなどの研修で編集スキルを上げ、マニュアルも作成。誌面デザインや原稿の質も上がったので、リソグラフ1色刷りだった会報誌はカラーの表紙のオフセット印刷に変えました。「1枠5万円で企業の社会貢献活動を紹介して広告収入を得たり、発行回数を減らしてページ数を増やすなどコストや労力を吸収するノウハウも使いました」。さらに、そうした知識をいかして新しい団体パンフレットも作り、『NGOの基礎知識』の改訂にも着手しました。
人材育成は新会員を中心に実施。通常、新会員には活動を通して思いを形にできるように、環境問題や社会的背景を学んだり、会議や発表のスキルを磨く研修を行っています。今回の助成では、それに加えて社会にはどんな問題があるのか現場を見て考え、それを変える活動を作るスタディツアーを研修として行いました。具体的な企画、スケジュール管理や視察先のセッティングまで参加者自身で考え、現場ではジャーナリストや地元関係者に話を聞いたり、A SEED JAPANとしてどう関わればいいかを議論しました。
「行き先に決めた川辺ダムは見学の直後に建設中止が決まったため、帰ってきてからも報告会や対外的なイベントを企画し充実した活動となりました」
- ニュースレター「種まき」 http://www.aseed.org/shop/backnum.html
助成事業終了後の波及効果
2年間の継続助成を受けた結果、WEBサイトや広報ツールは刷新され、多くの研修が実施されましたが、組織基盤強化という意味で、その成果はどのように蓄積されたのでしょう。助成事業の実施中に入会し、現在事務局長を引き継いでいる鈴木さと子さんも交え、さらに経過を伺いました。
1年目の事業成果について、木村さんはこう振り返ります。「WEBサイトのアクセス数は圧倒的に増えましたね。A SEED JAPANでは、WEBサイトを見て説明会に参加して入会する場合が多いのですが、その参加者も増え、季節によって波があった参加数も最近は一定して確保でき、入会につながりました」。情報が整理され統一感のあるサイトは団体の信頼度アップになったといいます。「当時はCI*という言葉も知らず、団体のシンボルカラーのオレンジも制作担当者の好みでした。それを、広報的視点から再検討して『若者のパワーや暖かさを表現する色』と説明できるようになった。こういうことも研修がなければ気づけなかったですね」。さらに、このサイトを作った会員は研修でスキルを上げてWEB業界に就職し、A SEED JAPANでもWEB部理事として活躍しているとのこと。会報誌も、誌面のクオリティを上げた結果「これなら僕もやりたい」と印刷・出版業界の社会人や美術系の学生が積極的に関わるようになりました。広報誌はその後数回のリニューアルを経て、現在は携帯に便利なA5判になり、編集部の人数も当時の半分に絞ってレイアウトの統一感を出しやすくしています。これらも編集や広報の知識を上手く継続した結果といえるでしょう。
一方で、社会人スタッフと学生たちとのスキルの差が大きくなり、社会人に頼りすぎたり、スキルのない人が関わりづらくなるという問題も生じています。これについては、少しでも差を埋められるよう引き続きスキルアップ研修を継続しています。
*CI(Corporate identity)=企業の特徴や理念を体系的に整理し、簡潔に表したもの。ブランド名やロゴ、キャッチコピーなどの表現にも集約される


最近は判型も持ちやすいA5判に変身。


人材育成研修の成果としては、具体的に理事を2名、事務局担当1名を輩出することができました。当時、研修も担当した鈴木さんは言います。「実は、人材育成目的のスタディツアーは初めてでした。でも、現場で何が起きているかをきちんと見ることで自分と環境問題との関係性を深く理解でき、継続的に活動するモチベーションも得られるんだということがよく分かりました」。川辺ダムの研修後、2名の理事が育ったことで確信を深め、翌年は六ヶ所村への研修ツアーを実施しました。そこから、さらにもう1人の理事が誕生しています。
また『NGO運営の基礎知識』改訂作業の一環だった団体のノウハウの整理は、新しい事業を生み出しました。それが、講師派遣事業です。整理されたノウハウは内部の研修にも有効でしたが、それを基に外部向けの研修も行えるようになったのです。「事業としての派遣は2007年度からです。当初は理事などの限られた人しかできなかった講義が、今では内部研修で学んだ会員をA SEED JAPANの講師として派遣できる形になりました。意欲ある人にステップアップの場を提供し、そこで得たノウハウを外部に提供して対価をもらう。これも助成事業の延長で生まれた成果です。活動によって人生に有意義なスキルを得ることは、活動も個人のモチベーションも向上させると痛感しました」。『NGO運営の基礎知識』自体の出版は少し遅れていますが、これも2008年度末には発行の予定です。
2年にわたり助成をフル活用し、広報力と人材育成を一気に推し進めたA SEED JAPAN。現在は会員数も1000人強、全体年間予算は7000万円を超えました。研修にもさらに力を入れて精力的に活動を続けています。
(文:山崎 玲子)
