2011年2月25日、東京臨海副都心にある「パナソニックセンター東京」のホールにて、2010年に「Panasonic NPOサポート ファンド 環境分野」の助成を受けた団体の成果報告会が開催され、NPOの代表者をはじめ、選考委員、NPO関係者、事務局など30名が参加しました。報告会の第一部は、各団体より取り組み内容と成果についての報告と選考委員からの講評、続く第二部ではグループディスカッションが行われ、組織基盤強化事業のノウハウや成果、課題を共有しました。この1年の取り組みを4時間かけてじっくりと振り返り、次のステップにつなげるための気づきを得る貴重な時間となりました。
パナソニック(株)役員
コーポレートコミュニケーション本部
本部長 大澤英俊
金融危機に端を発した財政悪化、新興国の台頭や中東の混乱など、わが国を取り巻く環境は混沌が続いています。しかし、そんな状況下においても持続可能な社会の構築に立ち止まる時間はありません。そして、その実現に向けて、地球市民の視点で活動するNPOの存在はますます重要になっています。この報告会はひとつの区切りではありますが、終点ではありません。皆さんのさらなる発展のためにも、互いに学び合い、高め合い、今後の糧を得る有意義な一日としてください。
第一部の報告会では、各団体がパワーポイントを使って1年間の取り組みと成果を発表しました。約8分の発表の後、選考委員の赤澤清孝氏(NPO法人 ユースビジョン代表)およびテクニカルアドバイザーの藤沢烈氏((株)RCF代表取締役)からアドバイスをいただき、さらに会場の他団体からもポストイットにメッセージや評価を書いて、用意されたボードに貼りました。ボードいっぱいに貼られたメッセージは、今後の糧となるよう各団体にお土産として持ち帰っていただきました。
また、すべての団体の発表の後には、選考委員の川北秀人氏からも団体ごとに具体的なアドバイスとコメントをいただきました。

選考委員長総評/川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者)
基盤強化助成は、組織が社会に働きかける活動を行う一般的な活動助成・事業助成と異なり、助成を受けた事業によって組織や活動がどう変わるかが重要です。
組織の活動には、めざす社会の姿などの「成果目標」と、それを実現するために活動として行う「一次的な行為目標」と、その活動による派生的な効果である「二次的な行為目標」があります。日本財団が実施している福祉車両への助成を例にとると、移動に困難を抱える方たちの生活(QOL)の向上が成果目標であり、その実現のために一時的な行為目標として、数万台に及ぶ車両の購入に助成します。その車両が各地でどんな人にどれだけ利用され、車両の整備などの支援体制がどう整ったかが2次的な行為目標であり、その結果として対象者の生活がどう向上したのか確認するのです。
みなさんも、社会を変える成果を得るために、誰と組み、どんな人を巻き込んで現場を作るべきかを、ぜひ改めて考えてください。
続く第二部は、茶話会形式でディスカッションを行いました。団体の特性によって3つのグループに分け、選考委員の赤澤氏にも入っていただき組織基盤をさらに強化していくための課題を話し合い、各グループごとに発表をしていただきました。

Aグループは、ビジョンを実現するための事業計画はすでにできあがっている団体が集まり、その質的向上と量的拡大に向けて新しい人材をどう巻き込むか、またその人材が定着するためにどんな仕組みを作るかといったことがテーマとなりました。とくに、人材を受け入れる際の働きかけや、定着させるための工夫での意見交換が行われ、ボランティアの人には多少難しくてもやれる仕事をきちんと提示する、役割分担表を作ってモチベーションを維持するといったアイデアが出ました。
Bグループは、中期計画を立てることで組織基盤強化を図った団体が集まり、策定以降の展開についてと、ステークホルダー、理事、スタッフ、ボランティアとのコミュニケーションについて話し合いました。最終的には、中期計画を明確にし、理事、現場スタッフ、ボランティアにきちんと提示することで迷いのない明確な活動ができる。そのために中期計画の検証を進め、コミュニケーションを重ね、ビジョンの見直しを定期的に図ることが大事だという結論になりました。
Cグループはコンソーシアム助成の団体と中間支援組織的な団体が集まり、他団体、企業や行政、マスコミなどとどう連携し波及効果を生み出すかが話題となりました。そのなかで連携のコツがいくつか挙がりました。「覚悟を決める」「腹を割る」。方向性を共有するためにイメージを「形にして見せる」。「何のために連携し、どこへ向かうのか」を明確にする。そして「市民を巻き込む」などです。市民の声を集約し力にすることはNPOやNGOの基本だということを再認識しました。
選考委員 赤澤清孝氏
(特定非営利活動法人 ユースビジョン 代表)
組織基盤強化のなかで人材育成は大きな課題だと思いますが、団体に入ったばかりの人がすべてを担うのは難しいものです。既存の方の仕事を棚卸しして、部分部分を担える人を増やしたり、これまでの成長のプロセスを再度振り返って、それらの仕事を身につけていくプロセスを考え、人材育成のマネージメントの仕組みとして位置づけることが非常に重要です。今日の成果報告会で、助成事業の1年を終えましたが、今日出会った団体とは、今後もぜひ情報交換や、進捗状況の報告などをしていただき、私たちにも発展の様子をときどき聞かせていただければと思います。
助成先団体の方に、本日の成果報告会や、この1年を振り返っての感想を伺いました。
エコ・モビリティ サッポロ
代表理事 栗田敬子さん
実は、助成説明会で参加したワークショップで活動の課題に気づかされ、理事とも課題を共有し申請を決めました。事業は、活動の軸となるベロタクシーのドライバーの質の向上ですが、運行3年目でこの機会を得たことは幸いでした。助成事業に取り組んだことで、結果として収益も上がり、地域での評価も上がりました。今後は、ベロタクシーを札幌に定着させ、さらに環境に配慮した乗り物の情報を発信していきたいと思います。助成中、四半期ごとの報告は大変でしたが、おかげで緊張感を持って事業を進められました。最初と最後に全団体が集まる機会があるのもネットワーク作りに役立ちました。
フェアトレード・ラベル・ジャパン 事務局長 中島佳織さん
申請段階では、顧客管理の効率化が最優先課題と考えていました。しかし、助成申請後に、サポート ファンド事務局から中長期計画の策定を行うようにと強く言われ、それが結果的には大きな財産になりました。中期計画策定の過程で理事会と事務局とで何度も議論を重ね、いまでは理事と事務局で月に1回の運営委員会を行っています。組織内の方向性も整理でき、こうした変化に期待してドイツ本部や海外ネットワーク組織からのリソースも増え、広い事務所へ移転して協力企業と頻繁に集まる場もできました。まさに、助成事業の過程で組織が変わったことを実感しました。今後はさらに組織の効率化を図り活動を進めていきたいと思います。
NPOサポート ファンドを通じて知り得た、組織基盤強化に取り組む全国の仲間とのネットワークをいかして、これからも継続的に組織基盤強化に取り組んでいただきたいと思います。
またNPOサポート ファンドでは、組織基盤強化の取り組みを支援した団体を通じて、他のNPOや社会に、その成果やノウハウが波及していくことを願っています。
今年1年の取り組みや成果、組織基盤強化の重要性を、ぜひ皆様からも同じ活動分野のNPOや、同じ地域で活躍されているNPOの皆様をはじめ、広く社会に発信していただけたらと思います。

