2010年3月10日、東京臨海副都心にある「パナソニックセンター東京」のホールにて、「Panasonic NPOサポート ファンド」の助成を受けて2009年に組織基盤強化に取り組んだ23事業の成果報告会を開催しました。当日は、助成を受けたNPOの代表者や選考委員、NPO関係者、企業の社会貢献担当者など60名が参加しました。報告会は、「環境」「子ども」と分野ごとに分かれて行い、1年間の取組みと成果についての報告と、成果をシェアしお互いにアドバイスしあうグループディスカッションの2部構成の約5時間。この1年の取り組みを、より確かなステップにするための総仕上げを行いました。



環境分野の成果報告会は、パナソニックからの挨拶の後、各団体から1年間の取り組み内容と成果について約10分の報告をいただきました。各団体の報告毎に、川北選考委員長、赤澤選考委員から質疑応答、コメントがあり、参加者も報告を聞きながら、付箋紙に質問やアドバイス、参考になったこと等を書き、各団体にフィードバック。その後、事業テーマごとに3つのテーブルに別れてグループディスカッションを行い、付箋メモをもとにお互いの取り組みをシェアしました。参加者からは「課題や解決策の情報共有や自団体の成果、課題を客観化できる機会として良かった」という声も聞かれました。グループディスカッション後は交流会もあり、1年間の取り組みを称えあうとともに、ノウハウを共有する充実した時間となりました。
パナソニック 役員/コーポレートコミュニケーション本部
本部長 大澤英俊
同志社大学大学院 浜矩子教授は、実質GDPは伸びているにもかかわらず、名目GDPは減少している現在の「新型デフレ」の原因の一つは、果てしない値下げ競争を引き起こす「自分さえ良ければ症候群」であると述べています。社会不安が多く誰もが自分の利益を守ることに汲々とするなか、NPOの志は大変貴重です。弊社も創業当初より「企業は社会の公器である」と言ってきましたが、衆知を集めて持続可能な社会をどう実現していくかということは今後ますます大事になってくると考えています。皆さんの活躍に期待をしています。
地産地消を進める会代表
谷口吉光さん
助成事業による最大の成果は、活動の目的を再確認できたことです。以前から課題だった「古い市民運動的発想からNPOの発想への転換」を外部のアドバイザーを交えて実施し、活動の目的が内部で充分に共有できていなかったことにも気づかされました。また、目的を明確にした結果、私たちと働きたいという若い人材も獲得できました。この助成は、選考から実施の過程で自覚や気づきを促すことも組み込まれていて勉強になりました。「若い人材を育てるプロデュース力」という次の課題もはっきりしたので、それに向かって今後も頑張ります。
環境NGO ezorock
代表理事 草野竹史さん
助成事業では、環境サークルから環境NGOへの脱却と同時に、今後の方向性も「自ら問題解決に力を注ぐ」のか「若者の人材育成をする」のか再検討しました。団体紹介ビデオの制作では第三者に入っていただき、「誰に何を伝えたいのか」が明確になりました。結果としてスタッフの入れ替わりもありましたが、外部の評価は上がりました。地域のなかでの役割がはっきりしたからだと思います。
今後は、北海道の環境NPOの中間支援組織とも連携し、さらに若者の育成に取り組んでいくために、活動のアウトラインを可視化して組織に落とし込めるよう頑張ります。
環境分野選考委員長
川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者)
NPOにとって、規模の拡大は必ずしも良いこととは限りません。それよりも、自分たちが社会に与える影響の最大化、あるいは社会の中での価値の最適化が重要です。そのためにも、ぜひ活動の中期計画を作ってください。そこでも、事業拡大のためではなく「社会を3年後・5年後に変えるための計画」づくりを忘れないように。環境NPOは、活動をするだけではなく、社会を変えるところまでが役割です。そのためには、何でも自前でやるのではなく、外部との連携や協働で社会を動かすことを、必ず考えてください。そうすれば自ずと、誰をどう巻き込むべきかも見えてくるはず。組織基盤強化は、社会を変えるために行うのだということを、心に留めて帰っていただきたいと思います。
★各助成事業の成果発表後の川北氏のコメントはこちら


環境分野のディスカッションのテーマは、「組織基盤強化の成功のカギ」。参加団体を「A.食と農」「B.活動歴の長い団体」「C.人材育成」の3つに分けて進行しました。
Aグループで話題になったのは「プロ農家の支援をどうするか」。市民セクターが、行政や農家とうまくコンソーシアムを組めないかという話になりました。Bグループでは、「企業とNPOの差別化」「価値化の創造」が大きなテーマでした。とくに、活動の事業化と社会的存在の両立についての悩みが今後の課題としてあげられたようです。Cグループでは、「若者と組織をどうつなげるか」がテーマとなり、学生インターンの活用、プロモーションビデオやSNSの活用などの事例を通して議論を深めました。
最後に川北氏から、「企業・行政に『影響力のあるプログラム』」をつくるヒントをいただきました。自分たちの活動分野の課題について、行政や企業がどう取り組んでいるかを調査・比較して、その結果をHPで公表すると同時に、マスコミで話題にすることで社会的な力を持ち、さらにそれを有償の講演や冊子に展開して自主財源に結び付けるアイデアです。「白書を作るのもいい。大豆コミュニティ白書とか、若者エコ白書、とか。行政や企業の現状を明らかにすることで社会も動き出すし、お金にもなります」と川北氏。たくさんのヒントをお土産にいただいて、成果報告会は終了となりました。



子ども分野の成果報告会は、各団体からの1年間於取り組み内容と成果について、助成1年目の団体からは10分、助成2年目、3年目の団体からは昨年までの取り組み内容を含め15分の発表をいただきました。参加者は報告を聞きながら、付箋紙に質問や良かった点、感想を書き、団体毎に用意された模造紙に貼って各団体にフィードバックしました。
成果報告会後は、組織基盤強化の事業テーマで3つのグループに別れてそれぞれの課題についてディスカッションを行いました。後半には、お茶やお菓子を食べながらディスカッションを深め、最後に全体で共有。参加者からは「テーマは異なっても経営・組織運営の面では共通の課題を持っていることが多く、学びになりました」との感想をいただきました。
アレルギー支援ネットワーク理事 中西里映子さん
3年間の継続助成によって、専門職種の方をどうサポートするか、自分自身のスキルアップも含めて深く考える機会を得ました。また、今年度の事業で念願の事務所を持つことができ、スタッフが顔を合わせて意思疎通を図れるようになりました。継続助成を得るためには次年度の目標を考えなければなりません。それが、結果的にやりっ放しではなく、事業後に反省をしてステップアップしながら活動を継続させることにつながり、大きな喜びにもなりました。助成事業として基盤強化を行うことで期限や目標が設定され、それが励みにも力にもなったと思います。
アジア日本相互交流センター
事務局スタッフ 斉藤順子さん
団体の自己分析の機会を得たこと、多くの人を活動に巻き込めたことが大きな収穫です。会報制作で専門家から助言を受けたり、制作にボランティアが関わることで責任感や活動の理解が深まりました。事業計画は高めの数値目標を設定したため苦労をしましたが、数字を共有することで目標が明確になり、緊張感を持って進めることができました。念願叶って2年継続の助成です。1年目の事業で足りない部分も見え、事業の効果も分かってきたので、今年は事務局業務の強化と若者の育成に取り組みます。今年で助成事業も完結できるよう頑張ります。
子ども分野選考委員
三好悠久彦氏(リベラヒューマンサポート理事長)
組織基盤強化の課題は大きく2つあります。ひとつは人材の問題。今後は人数だけでなく、どういう能力を持った人を活動に巻き込むかという質の問題が重要になると思います。法律や社会学、医療、福祉など、人材の質も考えていただきたいと思います。もうひとつは財源の問題です。ぜひ、活動のミッションを活かした自主事業を創り上げてください。私たちの組織も20年をかけて財政規模が10倍になり、有給スタッフも20名を超えました。時間をかけて、財源を確保する努力を重ねていくことが大事です。知恵を絞ってアプローチを続けていただきたいと思います。


子ども分野では、各団体を事業テーマで「A. 人材育成+ネットワーク強化事業」「B.施設スタッフ強化事業」「C.継続助成(事務局+財源強化)事業」の3つに分けてディスカッションを進めました。
Aグループは、いずれも継続して社会課題に取り組むために「お金と人をどう確保するか」が共通の課題。当事者の声を吸い上げて企業や行政に届け、支援者を増やすことが大事だという結論が出ました。Bグループは、施設運営を担う活動団体が集まり、議論は財源の問題からボランティアや行政とのコミュニケーションへと広がりました。代表者の求心力と会議による協議のバランスが課題となりました。Cグループの議論は、財源の確保に集中しました。会員の増加については、親子会員の設置、“欲しくなる”会員証の工夫などのアイデアが出ました。さらに、活動の場は地域限定でもネットで全国発信することで関心を集め支持者の増加につなげられるといった話も出ました。
最後に、ディスカッションに参加したパナソニックの社会文化グループメンバーからも、総評とともに企業の立場から見たNPO活動のヒントをお話させていただきました。
パナソニック 社会文化グループ
グローバル推進室室長 横川 亘
皆さんは、活動への熱意と能力は十分にお持ちです。今後は、経営能力が課題でしょう。企業が皆さんに期待するのは社会課題の解決力です。そして、解決力、すなわち活動の成果を自身できちんと評価し、さらに第三者による客観的な評価もあれば、企業も支援しやすくなる。そのあたりも念頭に置いて取り組んでいただければと思います。
パナソニック 社会文化グループグループマネージャー
小川理子
成果報告会の最後には、子ども分野の選考委員を務めたパナソニック 社会文化グループ グループマネージャーの小川理子より、「企業は、非常に細かい人材のスキル基準を元に育成をしています。皆さんも、そうした定義付けを深めることで、人材育成の方向性が見えてくるのではと思います。持続可能な社会の実現に向けた当社の骨太なプログラムとして、NPOサポート ファンドも力を入れていきますので今後もよろしくお願いいたします。」との挨拶で報告会を締めくくりました。
今回の成果報告会では、両分野ともにグループに分かれて、団体間で質疑応答やアドバイスしあえるようディスカッションの時間を長めに設定しました。NPOサポート ファンドでは、組織基盤強化の取り組みを支援した団体を通じて、他のNPOや社会にも、その成果やノウハウが波及していくことを願っています。助成事業に取り組まれた皆様には、今年1年の取り組みや成果、そしてその波及効果を社会に発信していただけたらと思います。
今年は本ファンドを立ち上げて10年目になります。本ファンドも持続可能な社会の実現に向けて、社会課題の解決が促進されるよう「NPOの組織基盤強化」に取り組んできました。節目となる今年は、NPOの組織基盤強化に有効なプログラムを提供できているのかどうか第三者に評価いただきながら、今後さらに皆様のお役にたてるようプログラムを充実させていきます。

