環境分野の報告会では、出席団体を3つのテーブルに分け、各団体10分程度の報告を行った後、1年間を振り返る自己評価シートを作成。その後、各団体から1年間の成果と課題、改善策を発表するという、緊張感たっぷりの進行でした。さらに、後半では環境分野の選考委員長である川北氏によるワークショップとともに、未来の組織図づくりにも取り組み、密度の濃い4時間となりました。


環境分野選考委員長
川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表)
自己評価シートは、マネジメントの基本サイクル「PDCA」のCにあたります。
事業を終えたら、何ができて、何ができなかったか、次にすべきことは何かを必ず文字に残すことが大切です。どんなにすばらしい事業も、記録がなければ、個人の体験で終わってしまいます。みなさんの団体の目的は、体験ではなく、社会を変えて育てていくことのはず。面倒がらずに、必ず毎回記録して確認し、共有の資源を残してください。

方針や戦略として、「事業」(何に取り組むか)と「予算」(どのような収支か)はどんな団体でも定めていますが、「組織編成」(誰が何を担当するか)も、必ず定めましょう。ひと(人材)・もの(施設や備品)・カネ(資金)・情報という組織の4つの経営資源の中で、多くの団体が「最も大切」と挙げる「ひと」だからこそ、「配置、目標と評価、受け入れ体制、育成、募集」という5つの基本業務を、しっかり行いましょう。その第1歩は、「現在」と「2年後」の2枚の組織図を描くこと。
スタッフやメンバーだけでなく、他の団体や行政・企業など、団体が事業を続ける上で重要な存在を、すべて描き込みましょう。
「誰が、誰と、何を担当するのか」を、はっきりすることが、活動の基礎を固める重要なステップです。
子ども分野では、すべての参加団体がパワーポイントを使って活動の報告を約10分で発表。それを聞きながら参加者は、ピンクの付せん紙に「良かった点」や「感想」を、黄色の付せん紙に「質問」や「疑問点」を記入して、用意された模造紙に貼り付けて、意見交換を行いました。びっしりと貼られた付せん紙は、後日、事務局が資料にまとめて各団体にフィードバックし、貴重なお土産となったようです。また、事務局運営委員長の山岡氏、子ども分野選考委員の三好氏からも、今後の活動の指標となる示唆に富んだ言葉をいただきました。


子ども分野協働事務局
山岡義典氏(市民社会創造ファンド 運営委員長)
皆さんと同様、私たちも組織の基盤強化についてはよく議論します。そこで「言語化が大事」という話が出てきました。市民活動は、もやもやとした思いから始まることが多い。しかし、組織として育つかどうかは、最終的にきちんとした言葉を見つけられるかどうかにかかっています。スタッフ間で、社会の中で、どういう課題をどう考え、どう伝えるか言葉で表現できたとき、その組織は強い発信力を持つのです。言語化とは、カッコいいキャッチコピーを作ることではありません。できれば10年くらいは持つような言葉で自分たちの活動を表現してみる、そういったことも意識してみてはと思います。この言語化という点で、今回の発表には興味深いものが沢山あったように見受けました。
子ども分野選考委員
三好悠久彦氏(リベラヒューマンサポート理事長)
事業には2つの意味があります。ひとつは、具体的に収益や寄付を得て財政を豊かにすることです。日本には寄付の文化がありませんが、それをつくるのが皆さんの言葉、プレゼンの力です。そして2つ目は、信頼や安心、あるいは寄り添ってもらえる世界をつくること。それには、より多くの人に情報を伝えて広めることが大事です。それが活動を豊かにし、その成果として「人、モノ、金、情報」が手に入ります。お金を先に考えると、必ず息切れしてしまいます。そして、皆さんが次世代に伝えていかなければならないのも、目に見えない情報です。それを忘れずに、活動を広げていって欲しいと思います。

懇親会では、選考委員や事務局スタッフも含め70名が交流を深めました。冒頭、成果報告会で総評をいただいたお二人から、参加者全員に向けてメッセージをいただきました。

●川北秀人氏(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表)
助成や助言など「市民活動を支援する活動」は、アメリカでは、スポーツの選手とコーチの関係だと言われています。適切な練習法を一緒に考えながら、激励する立場です。しかし日本の現状は、患者と医師の関係といったところでしょうか。応急処置や手術を施すケースもあります。そんな医師の立場から、みなさんにおたずねしたいのは、「みなさんは生活習慣病にかかっていませんか?」ということです。私たちのような立場にとって、最も支援しにくいのは、「昔からこうやってきたから」と、習慣を変えようとしない人たちです。このファンドでは、委員も事務局も、おせっかいを承知の上で、コーチや医師のような立場で、みなさんの団体の運営をよりよいものにしようと積極的にかかわっています。耳障りなこともたくさん申し上げたかと思いますが、ぜひ、そういうつもりでお聞きくださり、今後も組織基盤の強化に取り組んでください。

●三好悠久彦氏(リベラヒューマンサポート理事長)
今日は子ども分野からひとつお願いがあります。子ども分野には、教育、福祉、医療、障がい教育、環境と、それを取り巻くさまざまな世界があります。先日、中国に行って感じたのですが、昼間、子どもたちが街に出てこない。一人っ子政策によって学校に行きたくない子どもたちが増えているそうです。20年くらい前の日本の状況に似ています。一方で、親は子どもをすごく大事にする。こうした社会現象は、子どもたちのアイデンティティの確立にどう影響してくるのでしょうか。みなさんも自分の活動だけではなく、その外に広がる世界がどうなっているか、ぜひ意識して欲しい。市民活動は私たちの生きる世界をぐんと広げてくれます。そういう意味で、ぜひ、環境分野の方たちとも一緒にやっていきたいと思います。
会場で、組織基盤強化に取り組まれた皆さんに、この1年間を振り返っての感想をお聞きしました。
副代表理事 安井美喜さん 代表理事 安道照子さん

小児がん患者と家族の支援活動をしています。今回は相談ワーカー養成を目標に、関西で相談活動に携わっている方々に講座やOJTを実施しました。そこから「関西小児がんピアサポートネットワーク」という親の組織も生まれ、問題解決も可能になったことが最大の成果です。事務局の熱心なアドバイス、ヒアリングでの叱咤激励に感謝します。
運営委員 星野由実さん 理事 伊藤浩子さん

近年企業からの依頼が増えているゴミ拾いの活動を活かした社員研修の事業化に向け、外部のコンサルやヒアリング調査を実施して、その基盤を整えました。それにともない、団体の活動目的や実績を印刷物にまとめ、スタッフ間で共有できたことも大きな成果でした。
代表 是澤ゆかりさん

発達障がい児とその家族の支援活動団体で、2年前にNPO法人化しました。今回はピアカウンセラーとボランティアの育成講座を実施しました。小さい団体にとって基盤強化は半ば強制しないと後回しになってしまうので、その機会を設けられてよかったです。実践にはさらに経験が必要ですが、数年後には成果を数字で報告したいです。
事務局長 黍原豊さん

廃校で「森と風のがっこう」という循環型生活の体験活動を行っています。不便な立地で助成金に頼らず自立した活動を進めるため、WEBと広報の見直しを行い、会費収入もWEBの来訪者も増えました。外部の講師と話すなかで、根本的な広報戦略を見直すべきだと気づき、コミュニティカフェのグッズ選定なども統一した考え方ができるようになりました。
事務局長 田中絵美さん

障がい者や高齢者がプールで水に親しめるよう支援をしています。2年間の継続助成を受けて、専従職を2名から3名へ充実させ、活動の拡充を図りました。1年目は成果の実感はあっても内面的なものばかりでしたが、2年目には事業収入は3割強、受け入れ人数も約2割増えました。今年は、助成に頼らず、京都にも活動を広げられればと思っています。
事務局次長 庄司里美さん 共同代表 永田秀和さん

名古屋で地域循環型社会の創造をめざした活動を続けて29年。2年前に創設者である代表が交代したため、新体制の強化と中長期ビジョンの策定を行いました。各スタッフが組織について自分の口で語り、自立的に取り組めるようになりましたし、外部の方と行ったビジョンの検討は緊張感が違いました。今日は卒業式のようで感慨深いです。
交流会の最後に本ファンドの総合事務局を代表して社会文化グループのグループマネージャーである小川理子から「昨今の厳しい経済状況もありますが、『子ども』『環境』の2つの重点分野に絞って、今後も継続して取り組んでいきたいという決意を持っています。皆さんも社会の持続可能な発展のために共に頑張ってまいりましょう。」と集まった方々のご活躍を祈って、閉会と致しました。

