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パナソニック企業市民活動ブログ

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日本:2012 年度パナソニック提供 龍谷講座in 大阪レポート 最終回

2013011510.jpg2012年度社会貢献・国際協力入門講座の最終講座は龍谷大学経済学部 国際経済学科 教授 大林 稔さんです。アフリカ政治経済・国際協力論を専門とする大林稔さんが、市民の視点から途上国支援の新たな可能性についてお話し下さいました。大林さんは、ザイール共和国(現コンゴ民主共和国)、ブルンジ共和国、コートジボワール共和国などに延べ6年間滞在し、日本の公的機関、国際機関、NGOの立場から長年アフリカ支援に関わってきました。横浜で開催されたTICAD Ⅳ(2008年、第4回アフリカ開発会議)では、アフリカと日本の間で、市民社会のネットワーク構築や提言活動の中心的役割を果たした特定非営利活動法人TICAD市民社会フォーラムの代表を務められました。主な著書に『アフリカの挑戦』(昭和堂)、『アフリカ学入門―ポップカルチャーから政治経済まで』(明石書店)などがあります。

第18回「政府開発援助は政府任せでいいのか」
日時:11月21日(水)  午後7時~午後8時30分
会場:龍谷大学 大阪梅田キャンパス 研修室
講師:大林 稔
龍谷大学経済学部 国際経済学科 教授
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 ―講座概要―
現在の日本は、他の先進国や北欧諸国のなかにおいて、政府開発援助(Official Development Assistance, 以下、ODA)の額が年々減少する傾向にあります。こうした問題を踏まえ、日本の公的援助の現状と問題点についてお話しいただきました。講座後半は、「経済成長のための支援 」から「人間のための支援」へ援助の質が変化している背景を学び、私たちが望む援助のありかたと、私たちが参加できる新しい支援の仕組みについて考えました。

2013011511.png―「援助大国日本」から「援助小国日本」へ?―
ODAとは、公的機関が実施・提供すること、開発途上国の経済開発や福祉の向上に寄与することを主たる目的としていること、供与条件が開発途上国にとって負担にならないようグラント・エレメント(G.E.)* が25%以上であることの3つの要件を満たす資金の流れを示します(開発援助委員会DACの定義より)。日本のODAは1954年からはじまり、援助額の規模では、2001年まで世界第1位を誇りましたが、現在は第5位に後退しています。さらに、国民一人当たりの負担額をみると、先進諸国中18位と、むしろ援助小国であることが分かります。日本の援助は、歴史的な背景からアジア地域を重視してきましたが、21世紀、アジアが経済的に成長を遂げた後も傾向は変わらず、最貧国(後発開発途上国:開発途上国の中でも、特に発展が遅れている国々)が集中するアフリカへの比重は未だ1割前後に留まっています。世論調査によると、ODAに対しては現状維持を求める声が半分ですが、中身をみると「人間のための支援」を重視する人が多く、特に「教育」「飢餓対策」「貧困削減」といった分野を大切に考えていることがわかります。しなしながら、日本のODAがどのように使われているのか、我々は十分な情報を得ているのでしょうか?
*発展途上国への援助の中に占める贈与的要素。OECD の開発援助委員会(DAC)が採用している政府開発援助の質を示す指標。贈与相当分。
注:ODAに関する情報は外務省「政府開発援助(ODA)白書」を参照。

 

2013011512.png―日本のODAの特徴―
現在、日本のODA総額の最貧困国向けは1割程に過ぎず、世界的にみて地域配分に影響を与えているのは、貧困度ではなく貿易額です。また、もっとも貧しいといわれるサハラ以南アフリカでは、貧困度より外交上の利益が優先されています。つまり、現地の貧困な人々を援助することよりも、日本の経済的・政治的利益を重視して援助を配分しているのです。また援助先が独裁国家であるのか、あるいは民主的であるのかといった配慮も十分とはいえません。
もう一つの特徴として、日本の援助はインフラストラクチャー建設、とくに"経済インフラ"が重視される傾向にあります。経済インフラとは、道路・橋梁・港湾、鉄道、空港、発電所、ガスパイプライン、灌漑施設などです。他方、DAC諸国では、上下水道、学校、医療施設等、人々の日常の生活に不可欠な設備・施設といった"社会インフラ"の支援に力を入れています。しかし経済成長を支援することにばかり目が向いて、成長の影で拡大する格差や、成長から取り残される弱者を忘れては本当の「援助」とはいえません。しかも経済成長は民間資本によるものであり、援助が役に立つのかどうか、実は学問的にはよくわかっていません。それよりも今、生存の危機にさらされている多くの人を支援することのほうが大切だとも言えます。

  ―経済成長から人間へ、 イノベーションで「人間のための支援」を現実に―
現在、経済成長が、アジア・ラテンアメリカからアフリカへ広がりを見せています。同時に格差・環境被害・発展から取り残され周辺化される人々など経済成長の「ひずみ」も世界中に広がりつつあります。そうした背景から、支援の内容も、人々の選択や潜在能力、自由の拡大を目指す人間自身への開発へと移行しつつあります。日本でも、人道支援や基礎的社会サービスなどを重視すべきだとの声も強まっています。
市民の声をODAに反映させるのはとてもむずかしく見えます。でも私達一人ひとりが自分の技能や経験を活かして、イノベーションを起こせれば、ODAを巻き込むことも可能です。支援の最前線では、M-PESA(アフリカのモバイルマネー)、Kiva(インターネットを通じて途上国の起業家に融資する手法)、極貧の人たちへのファイナンス制度をはじめ、貧困者を巻き込んだ新たなビジネスモデルが展開され、社会的イノベーションが起こっています。人間の支援にむけて、「現金・IT・市場」を組み合わせた新たな発想による支援方法があちらこちらで模索されています。そうしたイノベーションに、企業・行政・NGOが連携することで大きな相乗効果が期待できるでしょう。これまで、日本のODAをより人間的にするためのさまざまな提言や批判がなされてきましたが、必ずしも成果を上げていません。しかしここ数年、IT技術の発展のお陰で個人でも新しいアイデアをだせば、援助や支援ができる時代になりました。個人がアイデアを創出し、社会的イノベーションをおこすことからはじめるという新しい発想によって、市民が参加できる援助・支援の枠組みを創りだし、よりよい未来を築けるのではないでしょうか。

 


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