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パナソニック提供 龍谷講座in大阪  2011年度 社会貢献・国際協力入門講座レポート

kouza1.jpg第4回の講師は、財団法人とよなか国際交流会主任職員を務め、日本に定住する外国人の支援活動を行っている山本愛さんです。山本さんは、1999年より、ネパールで児童労働問題に取り組むNGOでのボランティアとして活動を行う傍ら、現地の大学院で研究されました。帰国後、大阪のNGOでネパールの女性や被差別者との交流事業を担当した経験を活かし、部落解放運動にかかわる日本の人々や、ネパールの友人たちと被差別者と連帯するNGO「サマンタ(反差別草の根交流の会)」を立ち上げ、社会的弱者の人権問題に取り組んでいます。

第4回「人権から見る国際連帯のあり方」
〜ネパールの被差別カースト(ダリット)女性の運動を事例に〜
日時:6月1日(水) 午後19:00〜午後20:30
会場:龍谷大学 大阪梅田キャンパス 研修室 
講師:山本 愛
所属:財団法人 とよなか国際交流協会 主任職員

財団法人 とよなか国際交流協会 

― 講座概要 ―
国際協力・開発援助のイメージはと聞くと、学校や井戸、橋、道の建設とよくいわれます。その多くは現地の人々が求めている援助とは異なる場合があります。援助される側の意向が忘れ去られ、メディアが「現地の人びとにかわって何かをしてあげている」という報道を好むのも原因の一つです。

今回は、山本さんご自身が関わった国際NGO、フェミニスト・ダリット協会(Feminist Dalit Organization、以下、FEDO)の活動を通して、実際に出会ったネパールの被差別カースト・ダリット*の女性を事例に、これからの国際支援のありかたとして、連帯や人権の視点の重要性について話していただきました。
* ネパールのカースト制度の一番底辺に位置づけられ、壊された者・抑圧された者という意味。別名被差別カースト、不可触民と呼ばれている。

―“目に見えない援助”とは―
山本さんはダリットの女性と関わってきて、社会的排除に苦しむ彼女たちの背景には、「差別される自分が悪いという認識・自分の権利を知らない・権利を行使できる環境にない」という問題があることを挙げました。
こうした見えない社会の問題や仕組みを変えるためには、どのような支援があるのでしょう。開発のコンセプトとして、個人レベルでの生活の質の向上や能力の拡大、機会の平等の実現は重要であるがゆえに、人権やジェンダー(社会的性差)の視点を持つことは必要不可欠です。つまり支援とは、当事者が望む社会が実現するように、直接支援するだけではなく、社会の仕組みづくりにも協力することであり、また現地の人々が主体的に行動することを応援し、そこから生まれた新たな制度や仕組みが機能するために働きかけることも指しています。

―差別の背景とダリットの女性の立場― 
差別の背景は、その国の社会や文化が深く関係しています。
ネパールは多言語・多民族の国で、18世紀にヒンドゥー教徒によって統一されたこともあり、いわゆる家父長制(男性優位社会)とカースト制度(差別的な身分制度)の影響が強く残り、多様性豊かではあるが民族・階級の対立もある複雑な国家だといえます。

1996年にマオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)によるカースト制度の撤廃、憲法改正、共和制樹立を求めた反政府武装闘争が始まりましたが、2006年に和平協定を結び、現在まさに平和構築の段階という混乱した状況です。
ダリットの人々はネパールの人口の13〜20%を占めていると言われています。現存するカースト制度は「伝統的」なものではなく、ネパール統一時に支配層の人たちが意図的に制度化したものというのが事実です。
今では、憲法でも差別は禁止されていますが、それでも土地を持たないダリットは9割を占め、ネパールの平均識字率が49パーセント*であるのに対しダリットでは20パーセント程です。彼女らは父権社会におけるジェンダー差別、カーストによる抑圧、貧困といった複合的な問題を抱えています。ダリットに加えて女性という立場ゆえに、上位カースト女性が中心となっているネパールの女性解放運動では長い間その存在を無視され、またダリット解放運動の中心はダリット男性ゆえにダリット女性の声は届かず、ダリット女性が社会において周縁化されている状況が長年続いてきました。

差別が根強く残る農村地域では、いまだに女の子には教育が不要と考えられ、女性は家事と農業の重労働を毎日強いられています。健康面や衛生面においても知識などが足りないために、こうした状況はネパール女性の平均寿命が短い原因にもなっています。また女性に対する暴力も大きな問題です。
カースト差別は「職業や世系に基づく差別」であり、穢れ意識のもと、結婚・入居・職業などの差別が現在も続いています。
様々な差別、問題がありますが、“それも伝統・習慣なので仕方がない”と多くの人が捉えていることは大きな問題であり、さらなる意識啓発や差別をゆるさない社会のしくみづくりが重要です。
* 『世界子供白書2008』ユニセフ、2008年。

―FEDOの取り組み―
FEDOは数少ないダリットの女性が設立した現地NGOです。彼女たちのように、グループを作り組織化を進めることは、女性たちが悩みを共有し、自信や力を取り戻す最初の第一歩になります。
FEDOはダリット女性や子どもたちのニーズに応じた支援プログラムの提供、差別に対する意識啓発や政策提言という2つのアプローチのもと活動を行い、差別的な制度の撤廃、市民権はじめ様ざまな権利の獲得、公共の場施設へのアクセス、生活改善、エンパワーメントなどを求めて様ざまな活動を展開しています。

FEDOをはじめ、ダリットNGOや人権団体の取り組みによって、ネパールではダリットのための国内委員会も設置され、様ざまな機関における留保制度*も作られ社会的に援助する体制が作られました。しかし、いまだに根強い不可触制、差別を禁止する法律の不実施、ダリットの中でのカースト間差別といった現存する問題を、どのように解決するのかがこれからの課題です。

彼女たちは、社会にカースト差別が「伝統ではなく差別である」と気付かせ、加えて世界各国でも同じような生まれに基づく差別に苦しんでいる人々と連帯して国際的なネットワークを築き、国連や自国政府に対して差別撤廃の働きかけをおこなっています。

2001年の「国連反人種主義・差別撤廃世界会議」においてカースト差別は人種差別であると議論されたことを受け、2002年には国連・人種差別撤廃委員会で「門地(世系)に基づく差別についての一般的勧告」が採択され、カースト差別や部落差別などのいわゆる「身分差別」の撤廃に向けた新しい国際的な人権基準が誕生しました。
この委員会による歴史的な意思決定の背景には、日本の部落解放運動やインド、ネパールのダリット解放運動などによる長年のはたらきかけと、国際社会による意思決定の積み重ねがあったのです。

その結果、ネパールのダリット女性を取り巻く環境も大きく変わり、孤立していたダリットの女性たちは、世界各国の団体と連帯することでその存在と課題が社会に認知され始めました。

置かれている環境や文化的・宗教的背景が違うことを理解した上で、他国にも同じような悩みを抱える人がいるという認識を持つことが連帯の第一歩となります。
また、グローバル化によって、瞬時にネットを通じて繋がれることも、連帯にとっては大きなプラス面と言えるでしょう。
* 社会的弱者への優遇制度。例えば、高等教育機関の入学許可、公的雇用数や議会の議席数を一定の数値まで優遇する制度である。

―差別を“問題の一部”から“解決の一部”に―
山本さんは、こうした差別がどのように生まれてきたのかを考えるとき、社会的構造や歴史を知り、考えることが問題を解決する上で重要な視点といいます。
また、差別していない、されていないから無関係というのではなく、社会の一員として我々も差別を「解決の一部」になって捉えること、つまり“差別のある社会を容認する”のではなく“差別の解決を目指して社会に働きかける”側として考えることが大切です。
 多国籍企業の生産は、途上国の弱い立場にある女性や子どもの労働で生産が成り立っていることも多く、先進諸国はその恩恵を受けています。
私たち日本人もこうしたネパールの女性問題、差別問題とは決して無縁ではなく、解決を目指して支援する側に立つ必要があります。


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