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- 講演タイトル:
- 「世界中のすべての人が生きる自由を楽しめる日をめざして
〜人権という大切なもののために私たちひとりひとりにできることがあります〜」 - 講師:
- アムネスティ・インターナショナル日本 元日本支部長・現特別顧問 イーデス・ハンソン氏
- 2008年11月21日
- 大阪府立女性総合センター(ドーンセンター大阪)

「国際人ってなんやろ?」。まずこのことから考えてみましょう。外国語を巧みに使いこなせる人? もちろん上手に話せることは大事ですが、問題は話の中身。しっかりした中身のために大切なのは、知識だけでなく想像力です。「もしも〜やったらどうやろう」と考えてみることができるかどうか、ですね。
世界には一見して自分とは違う人たちがたくさんいる。食文化が違えば、「なんや気色の悪いもん食べてはるわ〜」と拒否反応を示すこともありますね。でも、食べてるものは違っても、おいしそうな表情はどの国へ行ってもほとんど同じ。違いの中にも共通点を見出す想像力こそが国際人に必要なものだと思います。

「違う」ということについて少し考えてみましょう。リンゴとミカン。色も味も違うけど、どちらもおいしいし値打ちがある。「違う」というだけで、いい、悪いは決められない。「違い」は悪いことではない。でも、「違う」と言ってはいけない、みたいな過敏さもちょっとおかしい。区別と差別はまた違う。よくないのは、自分の好みに合わないからといって否定することですね。
一番卑怯な使い方は、「あの人、なんかウチらと違うわ〜」。要するに、嫌いなんだけど、「あの人嫌い」って言ったら「キッツイ人やなあ」って思われるから、「違う」という言葉で排除する。そういうこと、身近にいっぱいあるでしょう。「違う」というなにげない言葉を、自分が日常でどんなふうに使っているか、一度見直してみてほしいですね。

私はインドで生まれて、小さいときにインド独立でヒンズー教徒とイスラム教徒が激しく対立し、たくさんの人や暮らしが壊された跡を見たり聞いたりしました。宗教が違うというだけの理由で殺される。信教の自由って何やろう、と思った。その後、アメリカへ渡りました。町には黒人がいるのに、通っていた学校には一人もいない。肌の色が違うというだけで、違う扱いを受けている。しかもそれが一生続く・・。
日本に来たのは48年前。一見すると平和で平等な国のようだけど、しばらくして在日韓国朝鮮人の問題を聞かされた。2世、3世になってもまだ差別がある。まして被差別部落の問題などは表向きは伏せられているから、なかなか気づかない。宗教も肌色も文化も違わないのに。違わないところにあえて「違う」という線を無理やり引いて作り出した差別。なんてややこしい! 人間ってどうしてこうも線を引きたがるんだろう、と思いました。
どこの地方の出身かで、かっこいいとか悪いとか。どこの学校を出たとか、どこの会社に勤めてるとか。おかしな線の引き方ばっかり。

そんな線だらけの世界の中でも、日本人の場合はたいていが線のこちら側、つまり、生きやすい方にいられる。私もそう。けど、それはたまたまで、自分の力ではない。考えてみたら、線の反対側にいる人も、たまたま。そこで、想像力の出番です。「もしも自分が線の向こう側にいたら?」
こちら側にいる人は、あちら側にいる人よりは少しは余裕があるはず。だったら、あちら側で身動きが取れずにいる人のために何か手助けができるんとちがう? もし私があちら側にいたら、どうにかして助けてほしいと思うに違いないですから。

あちこちにあるおかしな線を消していきたい。アムネスティの活動は、大きく言うとそういうこと。世界にはちゃんとした理由もなく人権を奪われて苦しんでいる人がたくさんいます。ただ政府と異なる意見を言ったり、デモに参加したというだけの理由で、捕らえられたり、自由を奪われたり。そういうことが日常的に起きている。
そんな彼らの手助けをするために、アムネスティには伝統的に「はがきを出す」という具体的な方法があります。ふだんの生活の中で誰でもできる。私もそこが気に入っています。毎月、会員の手元に届くニュースレターには、世界で今まさに起こっている人権侵害の事例が報告されていて、彼らを拘束している政府宛のはがきが添付されています。「こんなんおかしい!」と思ったら、自分のサインをして、70円切手を貼って、投函すればいい。問題の政府に、世界中からいっせいにはがきが届くわけです。「印刷された同じはがきがたくさん届いたところで何にもならへんやろう」と言う人もいる。けど、「世界中が見ている」ということを伝えることは、すごく大きな力になる。はがきの効果で釈放された人はたくさんいるし、南アフリカのアパルトヘイト廃止にもアムネスティのはがきアピールが大きな影響を与えました。

どこでどんな人権侵害が起きているかは、ロンドンにあるアムネスティの国際事務局が世界各地に専門の現地調査団を派遣して調べています。あらゆる角度で検証して、確かな裏づけが取れたときにはじめて公に発表する。情報の信憑性を損なわないように、各国政府からの援助はいっさい受けません。活動の資金はサポーター会員からの会費、寄付金、イベントやグッズ販売の収益でまかなっています。アムネスティが発信する情報が、世界のマスコミからニュースソースとして高い信頼を得ているのは、こうした精度の高い調査と徹底した中立公平の姿勢のおかげなんですね。
アムネスティが、その問題を取り扱うかどうかの基準としているのは「世界人権宣言」です。ちょうど60年前の1948年に国連に採択された、人間の基本的な自由を示した世界の約束です。あくまでもこの「世界人権宣言」に照らして、「今おたくの国でやってることは約束違反ですよ、ちゃんと守ってくださいね」と働きかけていく。政治や宗教には介入しない。政策提言もはがきの文言も、お願いであって、けっして攻撃じゃないんです。
会員はごく普通の生活者です。私が活動している和歌山のチームでは、ミャンマーでずっと軟禁されているアウン・サン・スーチーさんの解放を求める活動に力を入れていますが、死刑廃止に重点的に取り組むチームや女性問題を専門にするチームなど、それぞれの気になっていること、関心のあるテーマに取り組むことができます。
「世界人権宣言」を親しみやすいことばに翻訳しなおすコンテストを開催したり、その新しい翻訳で本を作ったり、はがきアピールの成果で釈放された人を海外から招いて講演をしてもらったり。みんなが知恵を出し合って、自分たちで運動を作っていくという面があって、それもアムネスティの活動のおもしろいところ。ずっとはがきで支援してきた人が釈放されたと知ったときなんて、それはそれは大きな達成感を感じます。
人権感覚は経験と想像力によって、少しずつ身についてくるもの。そして、想像力は筋肉みたいなもので、使っていれば強くなるし、使わなければ無いのと同じ。まずはひとりひとりがふだんの生活の中で「もし自分がその人やったら、とてもやないけどたまらんなあ」という、ごくあたりまえの感覚を大切にすることから始めてみてはどうでしょう。
●アムネスティ・インターナショナルについて
「世界人権宣言」に掲げられた人権を誰もが享受できる世界をめざし、人権侵害に対する独自の調査・報告、政策提言、市民活動を展開。1961年に英国の弁護士ピーター・ベネンソンの呼びかけで誕生し、現在、ロンドンにある国際事務局を中心に約80カ国に支部を持ち、220万人のサポーターに支えられている。戦地や紛争地域での拷問や虐待、大量殺戮への反対、拘束されている活動家の釈放要求、難民支援、女性に対する暴力や差別への反対、死刑廃止など、さまざまな人権問題に取り組んでいる。1977年にノーベル平和賞、78年に国連人権賞を受賞。日本支部は1970年の設立。
- アムネスティ・インターナショナルは下記リンク先をご参照ください。
http://www.amnesty.or.jp/
